バラと言われて多くの人が思い浮かべるのが、このハイブリッドティーの花姿ではないでしょうか。
大きな花を長い茎の先に一輪咲かせる、花屋さんでよく見かけるあのバラです。
ハイブリッドティー(Hybrid Tea)とは?
ハイブリッドティーとはバラの系統のことで、モダンローズ(現代バラ)の系統の一つです。
1867年にフランスで第一号であるラ・フランスが作出され、それ以前のバラをオールドローズ、以降のバラをモダンローズと呼びます。
ハイブリッドティーは、オールドローズの系統である、ハイブリッド・パーペチュアル・ローズ (hybrid perpetuals) とティー・ローズ (tea rose)を掛け合わせた雑種のバラで、2つの系統の優れた性質を合わせ持つバラの系統になります。
現在流通している切り花の大半はこのハイブリッドティーです。
大きな特徴として以下のような性質を持ちます。
- 木立性
- 四季咲き性
- 一本の茎に一輪の花を咲かせる
- 大輪(10~15㎝程度)
花は中心部が高く巻き上がる高芯咲きで、花弁は外側に反り返ります。
所謂「バラ」の形で、花には芳香があります。
そんな優れた特徴を持つハイブリッドティーですが、人気の中心はより育てやすい系統に移っていき、庭で見かける機会は減りつつあります。
病害虫に弱かったり、雨で花が傷んだりする品種もありますが、ハイブリッドティーの花の美しさは、最もバラらしいバラと言っても過言ではありません。
ここではそんなハイブリッドティーの品種の一部を、管理人宅の庭から紹介していきます。
ハイブリッドティーの品種
熱情(Netsujo)
1993年に京成バラ園芸から作出されたバラです。
深い赤の花色はやや黒味を帯び、反り返る花弁は先が尖ります(剣弁)。
絵に描かれるような深紅のバラで、ハイブリッドティーの中では育てやすい品種です。
花径は11~12㎝。
プライムミニスター・アベ(Prime minister Abe)
2014年に日本ばら会作出のバラの中から安倍首相に相応しいバラとして選ばれた花で、以前の品種名は「ユートピア」です。
管理人宅にはありませんが、「ファーストレディー・アキエ」という品種もあります。
ちなみに日本の首相でバラに名前が付くのは中曽根元首相に次いで2例目です。
淡い黄色の花弁の縁には赤い覆輪が入ります。
花弁のグラデーションが美しい品種です。
白川(Shirakawa)
1995年に京阪園芸から作出されたバラです。
「白川」の名前は、京都にある川の名前に由来しています。
花径は10㎝程度で純白の花が美しい品種です。
「白川」に限らず白バラは、雨に当たると傷みやすいのが難点です。
美しい花を咲かせるためには雨除けは必須。
管理人宅では開閉式のハウスで育てています。
レッドクリフ
岐阜県の倉地正夫氏によって作出されたバラです。
花弁は剣弁よりも丸みがある半剣弁で、写真では分かり辛いですが、花弁の裏側は白色です。
華やかな赤花ですが優しい印象の品種です。
コルデス・パーフェクタ(Kordes' Perfecta)
1957年にドイツの作出家コルデスによって作出された品種です。
コルデスは20世紀で最も偉大な作出家と言われていますが、そのコルデスが自身でパーフェクトと名付けた銘花です。
その名の通り、花色、花形、香り共に申し分なく、その上性質も丈夫で花付きが良いという、まさにパーフェクト。
ピンクの花弁のグラデーションが非常に美しい品種です。
バニラ・パフューム(Vanilla Perfume)
1999年にアメリカで作出された品種です。
クリームベージュの淡い花色が上品で、ふっくらとした剣弁が美しいバラです。
パヒュームと名前に付きますが、香りはそれほど強くなく、上品に香ります。
エレガント・レディ(Elegant Lady)
1998年にアメリカで作出された品種です。
故ダイアナ元皇太子妃に捧げらたバラで、以前は「ダイアナ・プリンス・オブ・ウェールズ」という名前でした。
苗木の売り上げの一部をダイアナ基金に寄付するという条件でこの名前になっていましたが、現在は契約が切れ、「エレガント・レディ」が正式名になっています。
クリームイエローの花弁にピンクの覆輪が入り、咲き進むに連れて覆輪の色が濃くなります。
大輪で、美しさと共に迫力があります。
手児奈(Tekona)
1998年に千葉県の小川宏氏によって作出された品種です。
「手児奈(てこな)」は千葉県に伝わる伝説の美女の名前です。
花弁は鮮やかなローズピンクで、裏側は淡いピンクになっています。
まとめ
最近は育てる人がめっきり減ってしまって寂しい限りですが、この花の美しさはやはり格別です。
花屋さんのバラしか見たことのない人は、花の大きさ、色の多彩さに驚きます。
花期になるとハウスの中は甘い香りで満たされて、一輪一輪をじっくりと眺めていく時間が至福の時。
栽培難易度はやや高めですが、思う通り、あるいはそれ以上の花が咲いた時の喜びは言葉では言い表せません。
良いものですよ、ハイブリッドティー。