草本 一年草・二年草 野の花

ワスレナグサ

  • 学名…Myosotis
  • 和名…ワスレナグサ(勿忘草、忘れな草)
  • 科名…ムラサキ科
  • 属名…ワスレナグサ属
  • 原産国…アジア、ヨーロッパ他
  • 花色…青、紫、ピンク、白
  • 草丈…10㎝~40㎝
  • 日照…日なた
  • 難易度…星
  • USDA Hardiness Zone:5 to 9

ワスレナグサとは

ワスレナグサ

ワスレナグサは、ムラサキ科ワスレナグサ属の一年草、または多年草です。
ワスレナグサ属の植物は、アフリカ、アジア、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ、南北アメリカに約100種が分布しており、日本にはエゾムラサキ(Myosotis sylvatica)が自生しています。

ワスレナグサの名前は狭義では、ヨーロッパからシベリアにかけて分布するスコルピオイデス(Myosotis scorpioides)を指しますが、広義ではワスレナグサの園芸品種の総称として用いられます。
※混同を避けるため、最近ではスコルピオイデスをシンワスレナグサと呼びます。

観賞用としてして普及しているのは、前述のエゾムラサキとシンワスレナグサの他、ヨーロッパ~アジアを中心に分布するノハラワスレナグサ(Myosotis alpestris)の3種で、選抜品種や交配種が数多く流通しています。

いずれの種も耐暑性は低く夏に枯れてしまうため、一般的には秋に種をまいて春に花を楽しむ秋まき一年草として扱われます。
※冷涼地では夏越しが可能です。

日本へは明治時代にノハラワスレナグサが導入されています。


ワスレナグサの花期は3月下旬~6月上旬。
花期になると、伸びた茎の上部の葉腋、または頂部に花序を出し、小さな花を多数咲かせます。
花序は多くの場合先が巻いたサソリ形で、咲き進むに従って伸びていきます。

▼ワスレナグサの花序

ワスレナグサの花序

花は直径6~9mmの大きさで、花冠が5裂して平らに開きます。
花冠中央部は白色で、黄色の付属体が付いています。
付属体は花が咲き進むと白くなります。

▼ワスレナグサの花

ワスレナグサの花

花は蕾の段階では薄桃色ですが、開花すると淡青色~淡紫色に変化します。

▼ワスレナグサの花と蕾

ワスレナグサの花と蕾

花色は淡青~淡紫色の他、ピンク、白。

▼白いワスレナグサとピンクのワスレナグサ

白色のワスレナグサ
ピンク色のワスレナグサ

果実は小堅果(しょうけんか)で、熟すと黒くなります。

※堅果(けんか)…乾燥して硬い果皮が種子を包み、裂開しない果実のこと。
小型のものを小堅果(しょうけんか)と呼ぶ。


葉は互生し、卵形~長楕円形で、細かな毛を持つ品種が多くありますが、無毛のものもあります。

▼ワスレナグサの葉の様子

ワスレナグサの葉の様子

草丈は一般的な品種で30㎝程度、高性種で50㎝程度に成長します。

▼たくさんの花を咲かせるワスレナグサ

たくさんの花を咲かせるワスレナグサ

耐寒性があり、育てやすい植物です。
種からでも容易に育てることができ、こぼれ種でもよく増えます。

ワスレナグサの名前の由来

ワスレナグサの和名は、英名である「forget-me-not(私を忘れないで下さい)」の直訳から付けられています。

英名の「forget-me-not」という名前は、ドイツの伝説に由来します。

ドナウ川のほとりに咲くワスレナグサを恋人に贈ろうと摘んでいた騎士が、誤って川の流れに飲まれてしまいます。
彼は「Vergiss-mein-nicht!(僕を忘れないで)」という言葉と共に、手にしていたワスレナグサの花を岸に佇む恋人に投げ、そのまま帰らぬ人となりました。
残された恋人は、彼の墓にこの花を供え、最期の言葉となった「Vergiss-mein-nicht!(僕を忘れないで)」を花の名前にしたと言われています。

花言葉である「真実の愛」「私を忘れないで下さい」も、この伝説に由来しています。

ワスレナグサの原種

シンワスレナグサ(Myosotis scorpioides)

シンワスレナグサ

ヨーロッパ~ロシア~モンゴルに分布するワスレナグサの原種です。

花序は咲き進むと共に伸びいき、長さ10㎝程度。
葉は長さ2.5~8㎝、幅0.7~2㎝、下部は倒披針形で葉柄があり、上部は長楕円形~楕円形で無柄です。

茎はしばしば匍匐し、草丈20~60㎝に成長します。

萼片が比較的短く、筒部の毛はまばらで伏せており、先が鈎状になっていないのが特徴です。

▼シンワスレナグサの萼の様子

シンワスレナグサの萼の様子

エゾムラサキ(Myosotis sylvatica)

エゾムラサキ

ヨーロッパ~アジアに分布するワスレナグサの原種です。
日本では北海道~本州に分布しています。

花序は散房状で、咲き進むと共に伸びていきます。
葉は長さ2.5~7.5㎝の倒披針形~長楕円形です。

茎は直立し、草丈12~30㎝に成長します。

萼は深く裂け、萼の筒部より裂片が長くなります。
全体に毛が生えており、毛の先が鈎状になります。

▼エゾムラサキの萼片の様子

エゾムラサキの萼片の様子

ノハラワスレナグサ(Myosotis alpestris)

ノハラワスレナグサ

ヨーロッパ~アジア、北アメリカに分布するワスレナグサの原種です。

花序は15㎝程度まで伸びます。

茎は直立し、草丈20~45㎝に成長します。

萼には毛が密生しており、毛は直立、または先が鈎状になります。

関連図鑑

よく似た花を咲かせる植物にシナワスレナグサがあります。
ワスレナグサより一回り大きな花を咲かせ、株も大きく育ちます。

ワスレナグサ(忘れな草、勿忘草)の育て方

ワスレナグサの育て方

栽培環境

日当たりが良く、水はけの良い場所が適しています。
花付き苗であれば、半日蔭で育てることも可能です。

冬越し、夏越し

冬越し

耐寒性は高く、北海道でもそのまま冬越し可能です。
苗が小さい場合は、霜柱で持ち上げられると根が傷むので、不織布や敷き藁で霜対策を施して下さい。

夏越し

冷涼地以外での夏越しは困難ですが、挑戦する場合は、庭植えなら鉢上げをします。
梅雨~夏の期間は雨や強い日差しが避けられる、可能な限り涼しい場所に移動し、やや乾燥気味に管理して下さい。

夏越しができるかも知れません。

水やり

湿り気のある土壌を好むので、水切れには注意が必要です。

庭植えの場合は、乾燥が続くようなら水やりをして下さい。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。

冬の間も同様に乾燥に注意します。

肥料

元肥として緩効性化成肥料を用土に混ぜ込んでおきます。
追肥は液体肥料を施しますが、肥料が多すぎると葉ばかりが茂り花付きが悪くなります。
様子を見ながら調整して下さい。

植え付け

適期は3月、10月頃です。
秋に植え付ける場合は、冬までにしっかりと根を張らすため、出来るだけ早目に植え付けます。

庭植えの場合は、用土に腐葉土を混ぜ込んで水はけの良い環境を作って下さい。
さらに元肥として緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
株間は20~30㎝です。

鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土(小粒)6・腐葉土4などの配合土に緩効性化成肥料を混ぜ込んで土を作ります。

増やし方(種まき)

こぼれ種で自然に増えますが、種まきで増やすことが出来ます。

種の採取

花が終わると下から順番に萼が茶色くなっていきます。
手で摘まむと小さな黒い種が出てくるので、採取して下さい。

種まき

適期は9月下旬~10月です。
寒冷地の場合は、春まきにします。

蒔く前に一晩水に浸して給水させると発芽率が上がります。
発芽温度は15℃~20℃程度。
移植を嫌う性質なので、種は花壇や鉢に直まきするかポットにまきます。
ワスレナグサの種子は嫌光性のため、覆土は種がしっかりと隠れるように。
水を切らさないように管理し、ポットにまいた場合は本葉が5~6枚程度になったら根を傷めないように注意して定植して下さい。

苗が小さい場合は、霜で根が持ち上げられて傷んでしまうことがあるので、霜よけを設置すると安心です。

病気・害虫

アブラムシ

風通しが悪いと発生しやすくなります。
風通しの良い環境で育て、発生した場合は駆除して下さい。

灰色かび病

多湿な環境で発生しやすい病気です。
傷んだ花や葉から発生することもあります。
風通しの良い環境で育て、傷んだ葉や花は早目に摘み取りって、発生を抑制して下さい。

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