- 学名…Nelumbo nucifera Gaertn.
- 和名…ハス(蓮)
- 科名…ハス科
- 属名…ハス属
- 原産国…熱帯~温帯アジア、オーストラリア北部、北アメリカ
- 花色…ピンク、白、黄色
- 草丈…50㎝~100㎝
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:4 to 9
ハスとは
ハスは、熱帯から温帯アジア、オーストラリア北部、北アメリカに自生するハス科ハス属の多年草です。
日本には古い時代に中国から渡来したと考えられていましたが、白亜紀末・7000万年~1000万年前の化石から各地でハスが発見されており、恐竜の時代に自生していたことが分かっています。
ハスは少なくとも白亜紀後期の約1億4000万年前には地球上に発生しています。
ポルトガル、アメリカ、カナダなどで化石が発見されており、各地で繁栄していたようです。
しかし劇的な環境の変化により、生き残ったのはアジア圏に分布するいわゆるハス(Nelumbo nucifera)と、主に北アメリカに分布するキバナハス(Nelumbo lutea)のみでした。
両種はかつて繁栄していた白亜紀のハスから分化したものです。
日本では現在各地で観賞用のハスが栽培されています。
地下茎はレンコンですが、食用の品種とは異なり、塊茎はあまり大きくなりません。
ハスの花期は7月~9月。
花期になると、水面から花茎を長く伸ばし、頂部に花を咲かせます。
花柄は葉柄よりも長くなります。
花は直径15~23㎝程度の大きさで、早朝に開き、午後には閉じてしまいます。
▼ハスの花
花被片は長さ5~10㎝、幅3~5㎝の長楕円形~倒卵形です。
花色は淡紅色~白色。
▼白い花を咲かせるハス
花の中心には特徴的な花托(かたく)があります。
※花托(かたく)…花柄の先端部分、萼や花弁、雄しべや雌しべが付く部分。
ハスはこの花托が大きく肥大しています。
ハスの花托は黄色い蜂の巣形で、上面は平らになっており、雌しべの柱頭がのぞいています。
雄しべは花托の周りに多数あり、葯は黄色で葯の先には白い突起物が付いています。
▼ハスの雄しべと雌しべ
雌しべの柱頭は受粉すると黒くなります。
▼受粉後のハスの雌しべと花托
果実は堅果で、長さ1~2㎝、幅0.7~1.5㎝のの楕円形~卵形です。
熟すと黒くなります。
果実は未熟の状態では生食、熟すと過熱して食用にすることが出来ますが、若干の苦味があり、あまり美味しいものではありません。
▼ハスの果実
地中の地下茎から葉柄を伸ばし、水面に大きなを葉を出します。
葉柄は長さ1~2mで葉身の中央に付き、葉身は直径20~60㎝程度の円形です。
葉柄には通気のため穴が通っており、葉身の葉脈まで繋がっています。
▼ハスの葉の様子
水中の土の中で塊茎を作ります。
塊茎はいわゆるレンコンで、葉柄同様に通気のための穴が通っています。
▼群生するハス
耐寒性はまずまずで、自生地の北限は青森県です。
土の中の蓮根まで凍ってしまうような場所でなければ戸外で冬越し可能です。
ハスというと池や水田での栽培を思い浮かべますが、大きな睡蓮鉢や樽でも育てることが可能です。
ハスの主な品種
ハス科はハス属のみの科で、ハス属には二種が分類されています。
薄紅色~白色の花を咲かせるいわゆるハス(Nelumbo nucifera)と、黄色の花を咲かせるキバナハス(Nelumbo lutea)です。
これらの品種を交雑することにより、数多くの品種が生まれています。
大賀ハス(Nelumbo nucifera)
千葉県千葉市検見川の落合遺跡で発掘された、2000年以上前の古代ハスです。
遺跡から発見されたハスの種は3粒のみで、その内1粒が育ち、花を咲かせました。
大賀ハスの名前は、種の発掘、育成を行った植物学者、大賀一郎氏に因みます。
花は薄紅色の一重咲きで、花被片の条線が比較的薄いのが特徴です。
古代ハスは他にも埼玉県行田市で発掘された行田ハス、岩手県中尊寺の金色堂から発見された中尊寺ハスがあります。
キバナハス(Nelumbo lutea)
北アメリカ南東部および中央アメリカに分布する、淡黄色~黄色の花を咲かせる品種です。
普通のハスに比べるやや気難しく花付きもあまり良くありません。
そのため、日本ではあまり栽培されません。
ミセス・スローカム(Nelumbo ‘Mrs.Slocum’)
アメリカで作出された八重咲き品種です。
花径23~30㎝の大輪品種で、花付きが良いのが特徴です。
花色は咲き始めはピンクで咲き進むとやや黄色くなります。
他にも非常に数多くの品種が流通しています。
ハスの育て方
栽培環境
直径50㎝以上、深さ30㎝以上の睡蓮鉢や樽で育てて下さい。
四角い容器に植えると、根が角にぶつかって成長が止まるので必ず丸い容器を使用します。
日当たりを好みます。
一日を通して日が当たる場所で管理して下さい。
少なくとも半日以上陽が当たらないと生育、花付き共に悪くなります。
上手く育てるにはとにかく日照が大切です。
冬越し
蓮根が凍らない限りは大丈夫です。
水全体が凍ってしまうような寒冷地では、防寒対策が必要になります。
穴を掘って鉢ごと地中に埋めて、小さな穴を開けた板や発砲スチロールで蓋をして蓮根の凍結を防ぎます。
この期間も水は切らさないように注意して下さい。
水やり
常に10㎝以上の水深を保って下さい。
夏場は非常に多くの水を消費するので、水切れには特に注意して下さい。
※金魚やメダカを入れるとボウフラ対策になるのでオススメです。
肥料
元肥として緩効性化成肥料を用土に混ぜ込んでおきます。
追肥は生育期間の間、月に1回程度、緩効性化成肥料を用土に埋め込んで下さい。
植え付け、植え替え
適期は3月です。
用土
田土が手に入るのであれば、田土が最も栽培に適しています。
田土8に完熟腐葉土2を混ぜて用土を作ります。
田土が手に入らない場合は、赤玉土8に完熟腐葉土2、または栄養堆肥2で代用可能です。
いずれの場合も苦土石灰を少量入れ、水を入れたらとろとろになるまでよくかき混ぜます。
※大賀ハスはシビアに土を選びます。
出来れば田土を用意して栽培して下さい。
植え付け
芽が伸びると傷みやすくなるので、早目に植え付けて下さい。
土の中に蓮根が水平に、芽が上になるように植え付けます。
鉢の中でうまくトグロを巻いて成長できるよう、蓮根は鉢の縁に沿うように植えて下さい。
すぐに植え付けない場合は、蓮根を乾かさないよう、濡れた布などで包んでおきます。
植え替え
すぐに根がいっぱいになるので毎年、株分けを兼ねて植え替えを行います。
鉢を傾けて水を捨て、土を洗い流して根を傷めないようにして取り出します。
新芽を付けた蓮根を3~4節ずつに切り取って、植え付けて下さい。
増やし方(株分け、種まき)
株分けと種まきで増やすことが出来ます。
種まきについては下記「種まき」の項目を参照下さい。
株分け
植え替え時に、新芽を付けた蓮根を3~4節ずつに切り取って、植え付けてます。
種まき
種の採取
花弁が散って残った果実が茶色くなり、中の種が黒くなったら採取できます。
取り出して日陰で乾燥させた後、ネットなどに入れて保管して下さい。
種まき
適期は4月~5月です。
ハスの種はこのまま何百年も眠り続けることが出来ます。
発芽しやすくするために、先をヤスリ等で削ります。
目安は中の白い部分が見える程度です。
かなり固いので頑張って削って下さい。
透明な容器に水を張って種を沈めます。
明るい場所で発芽まで管理しますが、水が煮えないように注意して下さい。
発芽したらそのまましばらく育て、葉が出て根がある程度伸びたら定植します。
その後は親株と同じように管理して下さい。
台風に注意…!
ハスの葉や蕾が強風に当たると傷んでしまいます。
蕾の場合はそのまま花が咲かなくなることもあります。
可能であれば風の当たらない場所に移動してください。
移動が無理な場合は暴風対策を施しますが、それでもかなり葉が傷みます。
暴風対策については庭木の台風対策のページを参照下さい。
病気、害虫
まれにアブラムシが発生することがあります。
見付け次第駆除して下さい。