中・高木 庭木

ハウチワカエデ

  • 学名…Acer japonicum Thunb.
  • 和名…ハウチワカエデ(葉団扇楓)
  • 別名…メイゲツカエデ(名月楓)
  • 科名…ムクロジ科
  • 属名…カエデ属
  • 原産国…日本、朝鮮半島
  • 花色…紅紫色
  • 樹高…5m~10m
  • 日照…半日蔭
  • 難易度…星
  • USDA Hardiness Zone:5 to 7

ハウチワカエデとは

ハウチワカエデ

ハウチワカエデは、日本、朝鮮半島に分布するムクロジ科カエデ属の落葉小高木です。
日本では北海道、本州の中部以北の地域に分布しており、山地の谷間や谷間に続く斜面などに多く自生しています。
※中部より南の地域では標高の高い山地などで見られます。

美しい葉と紅葉から観賞用に栽培されることがあります。


ハウチワカエデの花期は4月~5月。
花期になると、枝の頂部に花序を出し、小さな花を咲かせます。
花序は垂れ下がった散房状で、一つの花序には5~15個の花が付きます。
花序柄は長さ3~5㎝。

▼ハウチワカエデの花序

ハウチワカエデの花序

雌雄同株で、一つの花序に雄花と両性花が混在します。

花序には雄花の後に両性花が開花する雄花先熟花序と、両性花の後に雄花が開花する両性花先熟花序、雄花のみの雄花序があります。
ハウチワカエデには、雄花先熟花序のみの個体、両性花先熟花序のみの個体があり、ごく稀にこれらの花序が混在する個体、雄花序のみの個体があります。

詳細は⇒道総研「ハウチワカエデの雌雄異熟性(PDF)」

▼ハウチワカエデの両性花先熟花序の両性花期

ハウチワカエデの雌性先熟花序

両性花の雄しべは短く、葯は花粉を出しません。

▼ハウチワカエデの両性花先熟花序の雄性期

ハウチワカエデの花序の雄性期

雄花では、雄しべの花糸が花冠より長く突出し花粉を放出します。

花は萼片5個、花弁5個で、どちらも紅紫色をしています。
雄しべは8個、葯は黄色く、雌しべは1個。

両性花では雌しべが突出した後、急速に子房の翼が成長します。
子房には毛が密生しています。

▼翼が成長しはじめた両性花の様子

翼が成長し始めたハウチワカエデの雌花

果実は翼果で、果柄は上向きになり、7月~9月に熟します。
翼は水平~鈍角に開きます。

▼ハウチワカエデの果実

ハウチワカエデの果実

葉は対生し、直径9~12㎝のほぼ円形で、基部は心形、掌状に9~11裂します。
葉の縁には重鋸歯(じゅうきょし)があります。
葉柄は長さ3~5㎝、若い葉柄には毛があります。

※重鋸歯(じゅうきょし)…葉の縁の形で、大きな鋸歯の縁にさらに鋸歯があるもの

▼ハウチワカエデの葉の様子

ハウチワカエデの葉の様子

秋には美しく紅葉します。
葉色は赤~黄色で、地域や気候によって個体差があります。

▼紅葉するハウチワカエデ

ハウチワカエデの紅葉

樹皮は灰褐色、小枝は赤みを帯びます。
樹高5~10mに成長します。

▼成長したハウチワカエデ

成長したハウチワカエデ

新緑の明るい葉色が美しく、秋には紅葉し、成長はゆっくりで樹形は自然に整います。
夏場の強い日差しで葉焼けを起こすことがありますが、基本的に丈夫な性質で育てやすい樹木です。

地域によっては赤く紅葉しますが、冷涼地以外では黄葉が一般的です。
※個体差あり

ハウチワカエデの育て方

ハウチワカエデの育て方

※ここでは庭植えでの育て方を紹介しています。

栽培環境

半日程度の日照、または明るい半日蔭の、水はけが良い乾燥しすぎない場所が適しています。
夏場の強い日差しに当たると葉焼けを起こすので、西日が避けられる場所で育てて下さい。

乾燥を避けるため、株元に下草などを植えると効果的です。

自生種の分布は中部地方以北の地域で、暖地での栽培には向きません。
※中国地方平野部の筆者宅では問題なく育っています。

水やり

根付けば降雨のみで大丈夫です。
夏場に酷く乾燥が続くようなら、水やりをして下さい。

肥料

落葉後の早い時期に、緩効性化成肥料と有機肥料を混ぜたものを施します。

植え付け

適期は落葉期の12月~3月です。

根鉢の2~3倍の植穴を掘り、用土に腐葉土をたっぷりと混ぜ込みます。
植え付け後はしっかりと水やりをして、根鉢と土を馴染ませます。

必要があれば支柱を立てます。

剪定

適期は落葉期の11月下旬~2月上旬です。
成長が遅く、自然樹形の美しい木なので、剪定はそれほど必要ではありません。

込み入った枝や絡み枝があれば、取り除きます。
徒長しすぎた枝があれば、切り戻して下さい。

自然樹形を生かすため、刈り込むような剪定は避けます。

増やし方(種まき)

園芸品種でなければ種まきで増やすことが出来ますが、発芽率はあまり良くありません。
両性花先熟個体の種子の方が発芽率が良いようです。

種の採取

秋に種が熟すので、採取します。

種は取り撒きします。
保存後に播種することも可能ですが、種が乾くと休眠状態になり、休眠打破の処置が必要になります。

種まき

種の翼の部分を切り取り、1~2日、水につけて吸水させます。
種は平鉢やプランターに蒔き、覆土は1㎝程度。

明るい日陰で水を切らさないように管理して発芽を待ちます。
発芽は春になるので、秋に蒔いた場合は、水切れに注意します。

病気・害虫

アブラムシ、テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が発生することがあります。

テッポウムシ

株元におがくずのようなものが落ちていたら幹の中にカミキリムシの幼虫が潜んでいます。
放っておくと樹が弱ったり枯れてしまったりするので、早目に駆除して下さい。

幹に開いている穴から薬剤を注入するか、針金などを突っ込んで補殺します。
駆除後は新しいおがくずの発生が無いか、注意しておきます。

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