和名…エニシダ(金雀枝)
別名…エニスダ
科名…マメ科
属名…エニシダ属
原産国…ヨーロッパなど
花色…黄、白、複色
樹高…1m~3m
日照…日なた
難易度…
USDA Hardiness Zone:5 to 8
エニシダとは
エニシダの仲間は、ヨーロッパを中心に北アフリカ、カナリア諸島、アジアなどに約30種が分布するマメ科エニシダ属の低木です。
常緑性と落葉性の品種がありますが、一般的に「エニシダ」の名前で流通するのは、常緑性のキティスス・スコパリウス種(Cytisus scoparius)です。
スコパリウス種は、西ヨーロッパから中部ヨーロッパに分布しており、乾燥気味の砂質土壌の場所など、日当たりの良い場所に自生しています。
美しい花を咲かせることから世界で広く栽培されており、各地で栽培を逸出したものが野生化して定着しています。
生育旺盛で種でも増えるため、インド、オーストラリア、北米、南米などの一部の地域では侵略的外来種の指定を受けています。
エニシダの花期は5月~6月。
花期になると、前年に伸びた枝の葉の付け根、または枝先に花序を形成して花径1~2㎝程度の花を多数咲かせます。
花はマメ科の植物に多く見られる蝶形花で、5枚の花弁から形成されています。
花弁にはそれぞれ名前が付いており、上部の最も大きなものが旗弁(きべん)、その下の2枚が翼弁(よくべん)、下部でふっくらと重なった2枚を舟弁(しゅうべん)、または竜骨弁(りゅうこつべん)と呼びます。
しべは舟弁(竜骨弁)の中にあり、昆虫が吸密しようと花に乗ると、舟弁が開いてしべが現れる仕組みになっています。
▼エニシダの花の構造
花色は黄色、白、赤、複色。
最盛期には株を覆うように花を咲かせます。
黄花品種の花は特に鮮やかで、黄色に染まった株が遠くからでもよく目立ちます。
▼赤花のエニシダ
葉は3出複葉葉(いわゆる三つ葉)で、互生します。
枝は良く分枝し直立しますが、大きく育つと弓なりに下垂し、樹高1~3m程度に成長します。
耐寒性、耐暑性に優れ、育てやすい植物です。
剪定は込み入った箇所を間引く程度で、手間もかかりません。
丈夫な花木ですが、植物としての寿命はあまり長くないようで、突然樹勢が衰えて枯れることがあります。
エニシダの主な品種
エニシダ(Cytisus scoparius)
一般的に「エニシダ」と言うと本種を指します。
常緑性で樹高1~2mに成長します。
花の最盛期には株が黄金色に染まります。
シロバナエニシダ(C. multiflorus)
ヨーロッパのイベリア半島に分布するエニシダの近縁種です。
落葉性で、樹高2~3m程度に成長します。
純白の花と緑の枝のコントラストが非常に美しく、園芸品種の「セッカエニシダ」は生け花の花材としてもポピュラーです。
ヒメエニシダ(C. × spachianus)
鉢花として広く流通する園芸品種です。
樹高1m程度に育ち、枝先に鮮やかな黄色の花を咲かせます。
エニシダに比べると耐寒性に劣り、冬越しには0℃以上の気温が必要になります。
暖地の場合は庭植えも可能ですが、通常は鉢植えで育てます。
ホオベニエニシダ(C. scoparius var.andreanus)
1884年にフランスで発見されたエニシダの変種で、樹高1~2mに成長します。
落葉性で、黄色の花に入る赤い斑のコントラストが特徴的です。
「アカバナエニシダ」の名前で呼ばれることもあります。
流通する多くの園芸品種の交配親となっている種です。
他にも赤い花を咲かせる品種などが流通しています。
エニシダの育て方
栽培環境
日当たりが良く、水はけの良い環境が適しています。
日当たりが悪いと花付きが悪くなったり、花が咲かないことがあるので、一年を通してよく日の当たる場所で育てて下さい。
マメ科の植物で移植を嫌います。
特に大きく育った株の移植は難しいので、植え場所は熟考の上で決めて下さい。
冬越し
耐寒性に優れており、東北地方以南の地域であれば、戸外でそのまま冬越しが可能です。
ただしヒメエニシダは半耐寒性の植物で、寒さにはあまり強くありません。
0℃以上の気温が保てる場所で、寒風を避けて冬越しをさせて下さい。
最低気温が0℃を下回ることがあるような地域では、室内に取り込んで管理します。
寒さで落葉することがありますが、春になれば再び茂ります。
水やり
庭植えの場合は、根付いてしまえばほぼ降雨のみで大丈夫です。
鉢植えの場合は、用土の表面がしっかりと乾いてからたっぷりと。
乾燥気味な環境を好み、過湿な環境を嫌います。
鉢植えの場合は、梅雨の時期には雨の避けられる場所に移動して下さい。
肥料
あまり多くの肥料を必要とする植物ではありません。
庭植えの場合は、寒肥として冬の2月頃に、骨粉入りの油粕か緩効性化成肥料を施して下さい。
追肥の必要はありません。
鉢植えの場合は、春の3月と秋の9月中旬~10月中旬の間に緩効性化成肥料を株元に置き肥して下さい。
植え付け、植え替え
適期は3月中旬~4月です。
エニシダはマメ科の植物で、移植を嫌います。
植え付け、植え替えの際には根鉢を崩さず、根を傷めないように注意して下さい。
植え付け
酸性土壌を嫌います。
庭植えの場合は、植え場所にあらかじめ苦土石灰を使用して、土壌を中和しておいて下さい。
根鉢の2~3倍程度の植え穴を掘り、用土に腐葉土をたっぷりと混ぜ込んで、水はけの良い環境を作っておきます。
さらに元肥として、緩効性化成肥料、または有機肥料を植穴の底に入れて下さい。
鉢植えの場合は、赤玉土(中粒)4・日向土(中粒)4・腐葉土2などの水はけの良い配合土を使います。
元肥として鉢底に緩効性化成肥料を入れておいて下さい。
植え替え(鉢植え)
鉢植えの場合は、根詰まりを起こしてしまうので、2~3年に一度、植え替えを行って下さい。
直根性で移植を嫌います。
出来るだけ根鉢を壊さないように注意して、一回り大きな鉢に植え替えて下さい。
剪定
夏には翌年の花芽が形成されます。
剪定は花が終わり始めた頃、遅くとも7月上旬までには済ませて下さい。
夏以降に剪定を行うと、翌年の花数が減ってしまいます。
生育が早くよく分枝しますが、強剪定を行うと枯れてしまいます。
自然な趣で咲く姿が美しい樹なので、基本的な剪定は間引き剪定です。
間引き剪定
混みあっている箇所の枝を間引きます。
不要な徒長枝や内側に向かって伸びる(内向枝)、絡み枝などを、付け根から、または分枝している部分で切り落として下さい。
樹高を低く保ちたい場合は、長く伸びた枝を切り、短い枝を残すようにすると、コンパクトな樹形にまとめることが出来ます。
剪定の位置は、分枝している部分です。
増やし方(挿し木、種まき)
挿し木と種まきで増やすことが出来ます。
種まきについては下記「種まき」の項目を参照下さい。
挿し木
適期は3月~4月、6月下旬~7月上旬です。
3月~4月の場合は昨年に伸びた枝、6月下旬~7月上旬の場合はその年に伸びた枝を使います。
枝を10㎝程度の長さに切り取って挿し穂にします。
下の節の葉を取り除き、水揚げをしたら挿し木用土に挿して下さい。
明るい日陰で水を切らさないように管理して、発根を待ちます。
種まき
種の採取
花後にサヤが出来るので、秋になってサヤが黒くなったら種を採取して下さい。
▼黒く熟したエニシダのサヤ
採取した種は封筒などに入れて、種まきまで冷暗所で保管します。
種まき
適期は3月~4月です。
エニシダの種は固く、そのままでは吸水しにくいので、蒔く前に80℃のお湯に30分程度浸しておきます。
移植を嫌うので、種は大きめの鉢に1~2粒ずつ点蒔きし、覆土は2~3㎜程度に薄く被せます。
発芽までは半日蔭で水を切らさないように管理して下さい。
発芽後は日なたに移し、本葉が出てきたら元気な苗を残して間引いて下さい。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありませんが、コガネムシによる葉の食害が発生することがあります。
食害が発生した場合は、樹を揺するとコガネムシが落ちてくることがあるので、駆除して下さい。