中・高木 庭木

コブシ、シデコブシ

学名…コブシ:Magnolia kobus(Magnolia praecocissima)
シデコブシ:Magnolia stellata
和名…コブシ(辛夷)、シデコブシ(幣辛夷、四手拳)
別名…ヒメコブシ(シデコブシ)
科名…モクレン科
属名…モクレン属
原産国…日本、朝鮮半島
花色…白、ピンク
樹高…6m~15m
日照…日なた
難易度…星
USDA Hardiness Zone:5 to 8

コブシ、シデコブシとは

コブシ、シデコブシ

コブシ、シデコブシは、日本と朝鮮半島南部(コブシのみ)に分布するモクレン科の落葉性中高木です。
コブシは樹高10mを超える高木ですが、シデコブシは別名「ヒメコブシ」の名の通り樹高がやや低く、品種も多いことから、庭木としての流通量はコブシを上回ります。

両種共にモクレン属に分類されている樹木で、モクレンとは同属の近縁種になります。
モクレン同様、属名からマグノリアと呼ばれ、海外でも人気の高い花木の一つとなっています。

コブシ、シデコブシの花期は3月~4月。
花期になると、分枝した枝の頂部に、花径6~11㎝程度の花を一輪咲かせます。
花は6~30枚程度の花弁を持ち、花の中心には多数の雄しべ、さらにその中心に多数の雌しべがあり、どちらも螺旋状に配列しています。
花の基本的な構造は、近縁種のモクレンと同じです。

▼シデコブシの花の様子

シデコブシ

モクレンに比べると華奢な花弁が可憐な印象の花木です。
花色はコブシが白、シデコブシが白からピンク。

▼ピンクの花を咲かせたシデコブシ

シデコブシ

花は受粉するとユニークな形の果実を実らせます。
果実は秋になって熟すと、中から赤い種が出てきます。
コブシの名前は、この果実のデコボコを握り拳に見立てたものです。

▼コブシの果実

コブシの果実

葉は倒卵形から長楕円形で、枝に互生します。

耐寒性が高く育てやすい樹木です。
コブシは樹勢が強いため、しばしばモクレン類の台木として利用されます。
庭木としてはやや小ぶりなシデコブシの方が扱いやすいです。

コブシ、シデコブシの主な品種

コブシ(Magnolia kobus)

コブシ

日本の北海道から九州、および韓国の済州島に分布する落葉性高木です。
花径6~10㎝程度の白い6弁花を咲かせます。
成木になると樹高は10mを優に超えるため、植栽には広いスペースが必要です。

学名である「マグノリア・コブス」は、和名がそのまま学名になったものです。

シデコブシ(Magnolia stellata)

シデコブシ

日本の愛知県、岐阜県、三重県の一部という非常に狭い地域に自生する日本固有種の花木です。
庭木や公園樹として見かけることのあるシデコブシですが、自生種は個体数が非常に少ない希少な樹木です。
環境庁から準絶滅危惧種の指定を受けています。

花は径6~11㎝程度で、花弁数は9~30枚程度と変化に富みます。
基本種の花色は白ですがややピンクを帯びることもあります。
シデコブシの名前は、この花姿がしめ縄や玉串などに付ける四手(シデ)に似ており、コブシのような花を付けることに由来しています。

園芸品種には、ピンクの花を咲かせる品種も数多くあり、よく流通しています。

コブシ、シデコブシの近縁種

コブシ、シデコブシが属するモクレン属の植物は、東南アジア、北アメリカ~中央アメリカを中心に約120種が分布しています。
観賞用として栽培されているモクレン属の植物には本種の他以下のようなものがあります。

コブシとハクモクレンの違い

遠くから見るとなかなか判別が難しいコブシとハクモクレンですが、近くで見れば違いはすぐに分かります。

コブシとハクモクレンの違い

まず花の咲く向きが違います。
コブシの花は斜め上や横向きで方向がバラバラですが、ハクモクレンは上または斜め上で全ての花が上を向いて咲きます。
開花時期はハクモクレンの方がやや早く、葉は開花後に芽吹きますが、コブシの花の下には小さな葉が顔を出しています。
花弁の数はコブシが6枚でやや華奢で、ハクモクレンは9枚で丸みを帯びています。
大きさもコブシの方が小ぶりです。

他にも葉の大きさなどの違いがありますが、花期に花を見るのが確実です。

コブシ、シデコブシの育て方

コブシ、シデコブシの育て方

※樹勢が強く大きく育つので鉢植え向きの樹木ではありません。
ここでは庭植えでの育て方を紹介しています。

栽培環境

日当たりの良い場所が適しています。
半日蔭程度の日照でも育ちますが、本来が日当たりの良い場所に自生している樹木です。
出来るだけ日当たりの良い場所で育てて下さい。
成木になると移植の難しい樹なので、植え場所には十分なスペースを確保して下さい。

冬越し

耐寒性は高く、特に対策の必要はありません。
自生のコブシの北限は、北海道中川町と音威子府村にまたがる北海道大学中川研究林だと言われています。
※コブシの変種でやや大型の「キタコブシ」が自生しています。

水やり

根付けば、ほぼ降雨のみで大丈夫です。

肥料

木が若い内は、寒肥として1~2月の間に骨粉入りの油粕や緩効性肥料を株元に施し、5月にも同様に肥料を与えます。
成木になれば特に肥料は必要としません。
施す場合は、冬場に株元に少量をばら撒く程度で十分です。
肥料が多いと徒長してしまうので、注意して下さい。

植え付け

適期は1月~3月上旬です。
元肥として用土に腐葉土や完熟堆肥をたっぷりと混ぜ込んでおきます。
根を傷つけないように注意して根鉢を軽く崩し、深植えにならないように植え付けて下さい。

剪定

コブシは樹勢の強い樹なので、いつ剪定しても問題はありませんが、翌年の花芽形成が6月頃なので、花を咲かせるためには花後すぐに剪定を行います。

花は小枝に多くつきます。
徒長した枝や、絡み枝、株元から伸びるひこばえを切り落とします。
混み合った箇所は間引き、内側に向かって伸びている枝も剪定して下さい。
太い枝を切った場合は、癒合剤を塗布しておきます。

自然に樹形が整うので、必ずしも毎年剪定を行う必要はありません。

コブシの花が咲かない

コブシは隔年開花の性質が出やすい木です。
成木になると、剪定の時期は間違っていないのに花が咲かない…ということがあります。
これはコブシ本来の性質なのですが、花芽が極端に多くついているのを見つけたら、秋~冬にかけて花芽を半分くらい摘み取ってやります。
そうすると翌年からは毎年開花する場合が多いようです。

増やし方(種まき)

種まきで増やすことが出来ます。

種の採取

花後にデコボコとした赤い果実が実ります。
秋になって熟すと果実が裂けて、朱色の種が鞘にぶらさがります。
一部の種が裂け始めたら、裂ける前の果実を採取し、陰干しします。
数日で鞘が裂けてくるので、種を採取して下さい。
果実を取り出して、果肉を取り除いて水洗いし、乾かさないように直ぐに蒔きます。
※乾かすと発芽率が下がります。

種まき

採取した種をすぐにまきます。

種は赤玉土(小粒)を入れた鉢にまきます。
覆土は軽く種が隠れる程度で、水を切らさないように管理します。
春になって発芽したら、本葉が2~3枚程度になった頃から生長と共に徐々に鉢を大きくしていって下さい。

病気・害虫

カミキリムシ(テッポウムシ)

株元におがくずのようなものが落ちていたら幹の中にカミキリムシの幼虫が潜んでいます。
放っておくと樹が弱ったり枯れてしまったりするので、早目に駆除して下さい。
幹に開いている穴から薬剤を注入するか、針金などを突っ込んで補殺します。
薬剤の場合は、駆除の確認のため、新しいおがくずの発生に注意して下さい。

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