- 学名…Lupinus
- 和名…ハウチワマメ(葉団扇豆)
- 別名…ラッセルルピナス、ノボリフジ
- 科名…マメ科
- 属名…ハウチワマメ属
- 原産国…北アメリカ
- 花色…白、ピンク、紫、青、オレンジ、黄、赤、複色
- 草丈…40㎝~150㎝
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:4 to 6
ルピナスとは
ルピナスは、北アメリカおよび地中海沿岸地域原産のマメ科ハウチワマメ属(ルピナス属)の多年草、または一年草です。
ハウチワマメ属には150~200種の植物が分類されており、花の美しい幾つかの種が観賞用に栽培されています。
ルピナスの名前はハウチワマメ属の学名ですが、園芸界では観賞用として栽培されるハウチワマメ属の植物をルピナスと呼んでいます。
最も多く栽培されているのは、タヨウハウチワマメ(多葉葉団扇豆:Lupinus polyphyllus)を元に作出された園芸品種です。
栽培は1911年にイギリスの園芸家ジョージ・ラッセルが改良品種を開発したことに始まります。
ラッセルが開発したルピナスの系統を受け継ぐ品種は「ラッセルルピナス」と呼ばれ、ルピナスの中で最も人気のあるグループとなっています。
その他では、キバナハウチワマメ(Lupinus luteus)、ルピナス・テキセンシス(Lupinus texensis)、カサバルピナス(Lupinus pilosus)などが栽培されています。
日本へは明治初期に渡来しましたが、当時は肥料用の植物として、栽培したものを田畑にそのまま漉き込み、後から育てる作物の肥料にしていました。
現在では観賞用の品種が多数流通するようになり、初夏の花壇を彩る花として広く普及しています。
ルピナスの主な花期は4月~6月。
花期になると、茎の頂部から花序を出し、多数の花を咲かせます。
花序は総状で大きなものになると60㎝の長さに成長します。
フジの花を逆さにしたような形から、ノボリフジとも呼ばれます。
▼ルピナスの花序
花はマメ科に多く見られる蝶形花(ちょうけいか)です。
※蝶形花(ちょうけいか)…左右対称で蝶の形に似た花。マメ科特有の花の形。
上側の旗弁(きべん)1個、左右の翼弁(よくべん)2個、下側の竜骨弁(りゅうこつべん)2個からなる。
▼ルピナスの蝶形花
雄しべは10個あり、長短があります。
短い雄しべ5個は葯が長く、長い雄しべ5個は葯が短くなっています。
雄しべは基部で合着しており、雌しべを取り囲む形となっています。
▼ルピナスの雄しべの様子
花色は白、ピンク、紫、青、オレンジ、黄、赤、など多彩な色が揃います。
▼様々な花色のルピナス
果実は楕円形の豆果(とうか)。
豆果(とうか)…マメ科に見られる果実の形。鞘(さや)の中に種子が入っている。
乾燥すると縫合線に沿って裂開し、種子がこぼれる。
▼ルピナスの果実
果実は熟して乾燥すると裂開し、中の種子がこぼれ落ちます。
種子は一つの果実に2~12個入っており、扁平な楕円形~長円形です。
▼ルピナスの種子
葉は互生し、掌状複葉(しょうじょうふくよう)で、小葉は5~17個付きます。
※掌状複葉(しょうじょうふくよう)…葉柄の先に数枚の小葉が放射状に付く葉の形。
▼ルピナスの葉の様子
茎は分枝して花を咲かせながら、草丈40~150㎝程度に成長します。
▼たくさんの花を咲かせるルピナス
耐暑性が低く、暖地での夏越しは困難ですが、寒冷地であれば宿根して見事な花穂を立ち上げます。
ルピナスの主な品種
ラッセルルピナス(Lupinus polyphyllus hybrid)
北アメリカ北西部および北東部原産の多年草・タヨウハウチワマメから作出された品種群です。
▼原種のタヨウハウチワマメ
ラッセルの名前は最初に改良品種を作出した園芸家ジョージ・ラッセルに因みます。
花序は50~70㎝に成長し、ルピナスの代名詞とも言える有名品種です。
暑さに弱く、暖地、温暖地では一年草として扱われます。
暖かい地方では夏越しが困難で、なかなか大きく育ちません。
矮性の「ミナレット」は、草丈50~60㎝と小さく育てやすいラッセル系統の品種です。
花序は30㎝以上になり、生長が早いのが特徴。
暖地の場合はミナレットの方が育てやすいです。
キバナルピナス(ルピナス・ルテウス:Lupinus luteus)
イタリア、ポルトガル、スペインおよび地中海の島々に分布する一年草のルピナスです。
花後に実るマメはルピナス豆と呼ばれ、かつてはヨーロッパや南北アメリカで食用に使用されていました。
草丈50㎝前後に成長し、花序は15~25㎝の長さです。
鮮やかな黄色い花には甘い香りがあり、切り花としてよく利用されます。
ルピナス・テキセンシス(Lupinus texensis)
アメリカ・ルイジアナ州、オクラホマ州、テキサス州およびメキシコ北東部に分布する一年草のルピナスです。
草丈20~30㎝の矮性種で、花序は10~15㎝の長さになります。
基本種の花色は鮮やかなブルーですが、野生の変異種にピンクや白色の花を咲かせるものが見つかり、園芸品種の元となっています。
青花のブルーボンネット、赤紫の花を咲かせるテキサスマローンなどが流通しています。
コンパクトな草姿が愛らしい品種です。
カサバルピナス(ルピナス・パロサス:Lupinus pilosus)
アルバニア、ギリシャ、レバノン、シリア、パレスチナ、トルコ、エーゲ海の島々に分布する一年草のルピナスです。
草丈60~80㎝に成長し、やや大きな花をまばらに咲かせます。
花色は青、ピンク、白。
葉は掌状複葉で、小葉は5~11個。
カサバルピナスの名前は葉が傘を広げたような形に見えることに由来しています。
カサザキルピナスとも呼ばれます。
▼カサバルピナスの葉の様子
暖地の場合は夏に枯れてしまいますが、比較的簡単に栽培可能です。
ルピナスの育て方
栽培環境
日当たりが良く、水はけが良い場所が適しています。
酸性土壌を嫌うので、植え場所にはあらかじめ苦土石灰をまいて土壌を中和しておきます。
連作障害が出やすい性質なので、一度ルピナスを植えた場所では2年以上の間隔を開けて植えるようにして下さい。
冬越し・夏越し
冬越し
耐寒性は品種によってやや異なりますが、全般的に寒さに対する耐性は強い植物です。
ただし土まで凍ってしまうような寒冷地の場合は、凍結対策を施して下さい。
株元を腐葉土や敷き藁で覆ったり、鉢植えの場合は凍らない場所に移動します。
室内で管理する場合は、暖房の効いていない10℃以下の環境が理想的です。
夏越し
気温が25℃を超えると生育が止まり、30℃を超えると枯死してしまう可能性が高くなります。
暖地での夏越しは困難ですが、出来るだけ風通しの良い涼しい場所で管理するようにします。
それでも枯れてしまうことがあります。
水やり
乾燥気味の環境を好む植物で、過湿な環境が続くと根腐れを起こします。
鉢植えの場合は、用土の表面が完全に乾いてからたっぷりと水やりをして下さい。
冬場はやや乾燥気味に管理しします。
庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫です。
肥料
庭植えの場合は、元肥として緩効性化成肥料を用土に混ぜ込んでおきます。
追肥は基本的に必要ありません。
鉢植えの場合は、元肥の他、生育期間の6月初旬ごろまで月に2回程度の液肥を施します。
多肥な環境を好みません。
肥料は少なめを心掛けて下さい。
ただし暖地の場合は、早く苗を大きく育てる必要があるので、庭植えの場合でも5月頃まで液肥を追加します。
※肥料は窒素分の少ないものを使って下さい。
マメ科の植物の根には根粒菌(こんりゅうきん)が共生しており、空気中の窒素分を取り込んで養分として宿主に供給しています。
窒素分が多いとこの能力は衰え、少ないと活性化します。
そのため、マメ科の植物に肥料を施す場合は窒素分の少ないものを選びます。
植え付け・植え替え
植え付け
適期は春の3月、秋の10~11月です。
庭植えの場合は、あらかじめ苦土石灰を用土に混ぜ込んで土壌を中和しておきます。
水はけが悪いようなら腐葉土を混ぜ込み、元肥に緩効性化成肥料も施しておきます。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土にパーライトなどを1~2割ほど加えて土を作ります。
または、赤玉土(小粒)6・腐葉土3・パーライト1などの配合土を使います。
植え替え
直根性で移植を嫌います。
植え替えを行う場合は、根鉢を崩さず、根を傷つけないように注意して下さい。
花がら摘み
花穂の花が終わったら、花茎を付け根の部分で切り取ります。
そうすると、脇から芽が伸びて次の花を咲かせてくれます。
増やし方(種まき)
種の収穫
花後に豆が出来ます。
鞘が茶色く変色したら種が熟しているので採取して下さい。
採取した種は、封筒などに入れて乾燥剤と共に密閉容器に入れて冷蔵庫で保管します。
種まき
ルピナスの種は硬実種子で皮が硬く、そのままではなかなか発芽しません。
種まきの前に一晩水につけてしっかり吸水させておいて下さい。
種まきの適期は9月~10月です。
多年草タイプのラッセルは、寒冷地の場合6月頃にまきます。
移植を嫌うので種はポットに2~3粒ずつまきます。
覆土は種の2倍程度。
嫌光性種子なのでしっかりと覆土をします。
発芽温度は15℃~20℃(カサバルピナスは20℃~25℃)です。
水を切らさないように管理すれば数日で発芽します。
暑さが残っている場合は、涼しい場所で管理して下さい。
発芽したら元気な苗を残して間引きます。
本葉が4~5枚になったら、根を傷めないように注意して定植して下さい。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありません。