- 学名…Nerium oleander L.
- 和名…キョウチクトウ(夾竹桃)
- 科名…キョウチクトウ科
- 属名…キョウチクトウ属
- 原産国…地中海沿岸諸国~中近東、インド、中国
- 花色…ピンク、白、オレンジ、赤、黄
- 樹高…3m~6m
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:8 to 10
キョウチクトウとは
キョウチクトウは、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木です。
分布域は地中海沿岸諸国から中近東を中心に、インド、中国南部にあり、河川や渓谷沿いの日当たりの良い場所を好み自生しています。
古くから観賞用として栽培されているため世界各地で野生化しており、正確な原産地は特定されていません。
現在では南北アメリカやオセアニアなどでも帰化植物として定着しています。
日本へは中国経由で江戸時代中期に渡来しています。
強健な性質で大気汚染に強いため、工場地帯や幹線道路の街路樹としてよく植栽されており、夏を代表する花木の一つとなっています。
※キョウチクトウの学名は各地でそれぞれ付けられていたため、かつてはセイヨウキョウチクトウ(Nerium oleander)、キョウチクトウ(Nerium indicum)と分けられることもありましたが、現在ではすべて同一種とし、キョウチクトウ(Nerium oleandee)に統一されています。
キョウチクトウの花期は6月下旬~8月。
花期になると、枝先に花序を出し、10~20個の花を咲かせます。
花序は集散花序。
▼キョウチクトウの花序の様子
花は直径4~6㎝の高杯形で、基部は筒状、先は深く5裂しており、プロペラのように螺旋状に重なって平らに開きます。
▼キョウチクトウの花
花の中央には雄しべが変形した副花冠があります。
※副花冠(ふくかかん)…花被や花冠の内側にある弁状、または花冠状の付属物。スイセンなどに見られる。
▼キョウチクトウの副花冠の様子
雄しべ5個は花冠筒部についており、葯は矢じり形で、先に毛の生えた糸状の付属体が付いています。
雌しべは葯の下にあり、通常は見えません。
▼キョウチクトウの雄しべの様子
花色はピンク、白、オレンジ、赤、黄。
一重咲きの他、八重咲き品種があります。
▼白い花を咲かせるキョウチクトウ
果実は長さ12~23㎝の袋果(たいか)。
※袋果(たいか)…一本の線で裂開する袋状の果実。一つの心皮からなる。
▼キョウチクトウの果実
果実は熟すと裂け、中の種子がこぼれます。
種子は長楕円形で、長い綿毛が付いています。
▼キョウチクトウの種子
※日本で結実するのはごく稀です。
葉は長さ5~21㎝、幅1~3.5㎝の狭楕円形で、厚い革質です。
葉にクリーム色の斑が入る斑入り品種も流通しています。
▼キョウチクトウの葉の様子
株元から多数の枝を出して株立ちとなり、樹高3~6m程度に成長します。
▼大きく成長したキョウチクトウ
生育旺盛で、強健な性質です。
萌芽力が高いため強剪定も可能で、樹高、樹形のコントロールが容易です。
関東以南であれば、対策無しでの冬越しが可能です。
キョウチクトウには強い毒性があります。
剪定した切り口から出る乳液が、直接皮膚に触れないよう注意して下さい。
キョウチクトウの毒性
公園や校庭などにも植栽されるキョウチクトウですが、強い毒性があることで広く知られています。
葉、花、枝、根、果実などの他、周囲の土壌、生木を燃やした時の煙にも有毒物質が含まれるので注意が必要です。
フランスでは枝を串焼きの串として利用して、重度の中毒症度を起こした例があります。
日本では家畜用の飼料に葉が混入し、飼料を食べた牛が死亡した事例も報告されています。
こうしたことから、公園や校庭に植栽されているキョウチクトウを伐採しようとする動きがありますが、正しい知識を持って接すれば、恐ろしい植物ではありません。
毒性の強い植物は他にも数多くあり、ガーデニングでも用いられています。
古くから夏の庭を彩ってきたキョウチクトウの花を、必要以上に忌み嫌うことのないよう願います。
キョウチクトウの主な品種
キョウチクトウ ‘ダブルイエロー’(Nerium oleander 'Double yellow')
淡い黄色~クリーム色の八重咲き品種です。
カリフォルニアで作出されたとされています。
キョウチクトウ ‘ミセス・ローディング’(Nerium oleander ‘Mrs. Roeding’)
サーモンピンの優しい色合いの八重咲き品種です。
フイリキョウチクトウ(Nerium oleander ‘Variegatum’)
葉にクリーム色の斑が入る品種です。
花色はピンクで、華やかな印象です。
他にも黄花の半八重咲き品種のソレント、紅色のカージナルなどがあります。
キョウチクトウの育て方
栽培環境
日当たりが良く、水はけの良い場所が適しています。
日照時間が足りないと、生育が悪くなり、花がうまく咲かないことがあります。
よく日の当たる場所で育てて下さい。
冬越し
耐寒性はあまり高くありませんが、関東以南ではそのまま戸外で冬越し可能です。
根付くと寒さに対するある程度の耐性がつき、仙台での植栽例もあります。
水やり
庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫です。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
肥料
庭植えの場合は、寒肥として2月頃、有機肥料を株の周辺に埋め込みます。
鉢植えの場合は、2月頃、窒素分の少ない肥料を株元に置き肥して下さい。
植え付け・植え替え
適期は4月~6月、9月です。
暖かい地方の樹木なので、気温が高い季節に植え付け、植え替えを行います。
植え付け
庭植えの場合は、用土に腐葉土を混ぜ込み、元肥として植穴の底に緩効性化成肥料か有機肥料を入れておきます。
鉢植えの場合は、赤玉土(中粒)6・腐葉土4などの配合土を使います。
庭植え同様、植穴の底に元肥を施して下さい。
植え替え
鉢植えの場合は、根詰まりを起こしているようなら植え替えを行って下さい。
剪定
適期は4月~5月、11月です。
切り口から出る乳液には毒性があります。
作業には厚手のゴム手袋を使用し、使用した手袋は廃棄するかよく洗浄して下さい。
剪定
生育旺盛で萌芽力が強く、横に広がってすぐに大きく育ちます。
基本的にどんな剪定をしても大丈夫です。
ある程度は球形に整うので、絡み枝や徒長枝、内側に向かって伸びる枝など不要な枝を切り取って、全体の風通しと日当たりをよくします。
枝の途中で切らず、分枝した部分の元から剪定します。
樹高を低く抑えたい場合は、高くなった枝を地際から切り、ひこばえで枝を更新します。
さらに低くしたい場合は、1m程度の高さでバッサリと切って下さい。
増やし方(挿し木、取り木)
挿し木と取り木で増やすことが出来ます。
挿し木
適期は6月~7月です。
枝を10~20㎝程度の長さに切り取り、穂木にします。
下の節の葉を取り除いて、残った葉は1/2程度にカットして下さい。
水揚げをしてから挿し木用土に挿します。
水に挿しておくだけでも発根します。
取り木
適期は6月~7月です。
取り木したい部分を曲げて地面に固定します。
土に埋めておくと2か月ほどで発根するので、切り離して植え付けて下さい。
病気・害虫
病害虫の発生はあまり見られません。
まれにキョウチクトウアブラムシが発生するので、見つけ次第駆除して下さい。