ウスベニアオイとゼニアオイは非常によく似た草姿をしています。
どちらもヨーロッパ西部から北アフリカを原産とする、アオイ科ゼニアオイ属(マロウ属)の多年草です。
草姿が酷似しているのは当然で、ゼニアオイはウスベイアオイの変種(または園芸種)です。
ゼニアオイと言えば江戸時代に渡来して、本州以南の地域で野生化している帰化植物です。
多くは市街地に自生しており、道端で見かけるマロウの花は、多くの場合ゼニアオイです。
しかしながら、ウスベニアオイも野生化しているのが各地で確認されており、道端に生えているからと言ってゼニアオイとは限りません。
また、流通名も混乱していることが多く、コモンマロウと言えば通常ウスベニアオイを指しますが、ゼニアオイもコモンマロウの名前で呼ばれていることがあります。
現在では日本でコモンマロウとして流通している苗の多くがゼニアオイのようです。
庭で育てているコモンマロウはウスベニアオイですか?それともゼニアオイですか?
ここではそんな両種の違いを解説していきます。
※ゼニアオイには様々な学説があり、ヨーロッパではウスベニアオイの園芸種の一種として扱うのが一般的となっていますが、The Jepson Herbariumでは変種、Flora of Chinaでは別種として扱われています。
ウスベニアオイとゼニアオイの違い
酷似した草姿の両種ですが、よく見ると違いがあります。
ウスベニアオイとゼニアオイの花の違い
▼ウスベニアオイの花
花色は淡いピンク~赤紫色で、花弁は凹形、葉の付け根に1~4個が付きます。
※稀に5個の花が付くことがあります。
▼ゼニアオイの花
花色は濃ピンク~紫色で、花弁は浅い凹形、葉の付け根に5~15個が付きます。
※5個以下のことがあります。
ウスベニアオイとゼニアオイの葉の違い
▼ウスベニアオイの葉
葉は5~7裂し、切れ込みが深いのが特徴です。
▼ゼニアオイの葉
葉は浅く5~7裂した円形に近い形です。
※写真のゼニアオイの葉は特に切れ込みの少ないものです。
ウスベニアオイとゼニアオイの茎の違い
▼ウスベニアオイの茎
全体に荒い毛が生えています。
▼ゼニアオイの茎
一般的に茎は無毛です。
※葉柄の上部の溝には毛があります。
まとめ
ウスベニアオイとゼニアオイの違いをまとめると、
ウスベニアオイ | ゼニアオイ | |
花 | 淡いピンク~赤紫色、1~4個が束生 ※稀に5個の場合もある |
濃ピンク~紫色、5~15個が束生 ※稀に5個以下の場合もある |
葉 | 切れ込みが深い | 切れ込みが浅く円形に近い |
茎 | 毛が生えている | 一般的に無毛 |
…となります。
ただし、淡い色の花で茎に毛があるのに葉が丸い…なんていう両種の中間のような草姿のものもあり、正確な同定は難しいのかも知れません。
ちなみにページトップの写真は管理人宅のマロウですが、どうやらゼニアオイのようです。
花色は薄いのですが、葉の切れ込みが浅く、茎は無毛、5個以上の花が葉の付け根に付きます。
何となく残念な気分になるのは気のせいでしょうか(笑)
その後「コモンマロウ(Malva sylvestris)」と記載のある種を購入し、育てたのがこちら。
紫色の花が咲くのは分かっていたのですが、花弁は浅い凹形、花は1~4個が束生。
葉は微妙に円形で、茎は無毛。
ゼニアオイ…なんでしょうか??
いつか「これぞウスベニアオイ」という苗に出会いたいものです。
それまでに庭がマロウ畑になりそうですが(笑)
どちらにせよ、ハーブティーで楽しむ分には問題ありません。
乾燥した花で入れたハーブティーは美しいブルーを発色し、レモンを加えるとパッとピンクに染まります。
夜明けのハーブティーと呼ばれる所以です。
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