- 学名…Cotinus coggygria Scop.
- 和名…ケムリノキ(煙の木)
- 別名…ハグマノキ(白熊の木)
- 科名…ウルシ科
- 属名…ケムリノキ属
- 原産国…ヨーロッパ、ヒマラヤ、中国
- 花色…赤紫、赤、ピンク、白、緑
- 樹高…3m~5m
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:5 to 8
スモークツリーとは
スモークツリーは、ヨーロッパからアジアにかけて分布する、ウルシ科ケムリノキ属の落葉低木~小高木です。
分布域はフランスからギリシャ、ウクライナからアゼルバイジャン、イラン、パキスタンの他、ヒマラヤ地域、中国などにあり、丘陵や山地の森、茂みの中などに自生しています。
日本へは明治時代に渡来し、ユニークで印象的な花を咲かせることから、近年庭木として急速に普及しました。
スモークツリーの花期は6月~7月。
花期になると、枝先に円錐状の花序を出し、小さな花を多数咲かせます。
▼スモークツリーの花序
花は直径約3㎜の5弁花で、淡黄色~淡緑色をしています。
スモークツリーは雑性で、両性花と共に雄花または雌花、もしくは両方の花を付けます。
雄花には5個の雄しべがあり、雌しべは退化しています。
▼スモークツリーの雄花
雌花には1個の雌しべがあり、花柱は3個、雄しべは退化しています。
▼スモークツリーの雌花
花序の花の多くは不稔性で、花後は花柄が長く伸びていき、微細な毛に覆われます。
この花後の花序は遠くから見ると煙のように見え、スモークツリーの名前の由来となっています。
「ケムリノキ」の和名も花序の様子にちなみます。
※花後にスモーク状になるのは雌花が入った花序で、雄花のみの花序はスモーク状になりません。
▼スモークツリーの長く伸びた花柄の様子
▼花後の花序の様子
花柄の色は品種により異なり、写真の赤紫の他、赤、ピンク、白、緑などがあります。
▼白い花柄のスモークツリー
▼ピンク色の花を咲かせるスモークツリー
葉は互生し、長さ3~8㎝、幅2.5~6㎝の広楕円形~倒卵形です。
葉柄は最大3.5㎝程度。
緑葉のものから銅葉、黄金葉の品種があります。
▼スモークツリーの葉の様子
樹高3~5mに成長しますが、2m程度に収まる矮性種も流通しています。
多くの品種は、秋には美しく紅葉します。
▼紅葉するスモークツリー
耐寒性、耐暑性に優れており、病害虫の発生もほとくどなく、育てやすい花木です。
ただ、若木の内は樹形が整いにくく、剪定が難しくなります。
成木になると横に広がって、自然と美しい樹形に整います。
スモークツリーの主な品種
グレース(Cotinus x obovatus 'Grace')
ケムリノキ(Cotinus coggygria)と近縁種であるアメリカンスモークツリー(Cotinus obovatus)との交雑種です。
アメリカンスモークツリーは、アメリカ南東部に分布する小高木~高木で、スモークツリー同様にふわふわした花柄を伸ばします。
グレースは、赤紫色の新葉が美しい品種です。
葉色は夏になると緑を帯びますが、新葉の時期には枝先から下の葉へと美しいグラデーションを見せてくれます。
花柄は赤紫色で花付きが非常に良く、成長が早いのが特徴です。
ロイヤルパープル(Cotinus coggygria ‘Royal Purple’)
新葉の濃い赤紫色が非常に美しい品種で、銅葉の庭木の代表格です。
葉色は夏になるとやや緑を帯びますが、秋には美しく紅葉します。
花柄は赤紫ですが花付きは良くありません。
成長はゆっくりで、ある程度成長しないとスモークにはなりません。
ゴールデンスピリット(Cotinus coggygria 'Golden Spirit')
黄金葉のスモークツリーで、春の芽吹きの時期には特に美しく、新葉はライムグリーンに輝きます。
花柄はピンク色で、秋には美しく紅葉します。
ヤングレディ(Cotinus coggygria ‘Young Lady’)
木が小さな内から花を付け、花付きが非常に良いのが特徴です。
葉は緑で、花柄は淡緑から白、薄桃へと変化していきます。
秋には葉が赤紫色を帯び、銅葉種のような葉色に紅葉します。
他にも様々な品種が流通しています。
スモークツリーの育て方
栽培環境
日当たりが良く水はけの良い場所が適しています。
成長が早く、枝が横に張ります。
植え場所にはある程度の広さが必要です。
※矮性品種はそれほど大きくはなりません。
根を深く張らない性質なので、強い風の当たる場所は避けた方が無難です。
冬越し、夏越し
耐寒性、耐暑性ともに優れた樹木です。
栽培適地は北海道南部~沖縄です。
水やり
庭植えの場合は、植え付け直後は水やりをしますが、その後は降雨のみで大丈夫です。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
やや乾燥気味の環境を好むので、水のやすりぎに注意して下さい。
肥料
庭植えの場合は、元肥として用土に堆肥や腐葉土を混ぜ込んでおけば、追肥の必要はほとんどありません。
生育が悪いと感じるようなら、寒肥として12月~3月の間に、緩効性化成肥料を施して下さい。
鉢植えの場合は、寒肥として12月~3月の間に、緩効性化成肥料を施します。
植え付け、植え替え
11月~3月上旬が適期ですが、厳冬期は避けます。
植え付け
庭植えの場合は、根鉢の2~3倍程度の植え穴を掘り、用土に腐葉土や堆肥を混ぜ込んでおきます。
植え付け後はたっぷりと水やりをし、棒などで突いて土を馴染ませて下さい。
必要であれば支柱を立てます。
鉢植えの場合は、赤玉土5・腐葉土3・川砂2などの配合土を使います。
根鉢を軽く崩して植え付けて下さい。
植え替え
鉢植えの場合は、根詰まりをしているようなら植え替えを行って下さい。
剪定
成長が早くよく茂るので、基本的に毎年剪定を行います。
適期は12月~2月の落葉期です。
内側に向かって伸びた内行枝や絡み枝を切り落として、日当たりと風通しを良くします。
どの部分で切っても、新しい枝が出てきます。
スモークツリーは「旧枝咲きタイプ」の樹木です。
昨年出た枝に花が付き、新枝には花が付きません。
花を咲かせたい枝だけを残して、好みの樹形になるように剪定して下さい。
元気に良く育っている木なら強剪定にも耐える強さがあります。
花を楽しまないのであれば葉の無いところまで切ってしまっても大丈夫です。
※切り口から出る樹液はマツヤニのようで、服に着くとなかなか取れないので注意して下さい。
増やし方(挿し木)
種まきで増やすことが出来ますが、花が咲くまで雌雄の区別は付きません。
挿し木は困難な木と言われていますが、品種によっては発根しやすいものもあります。
挿し木
スモークツリーはウルシ科の樹木で活着率は良くありません。
多めに挿し木をしておくと、品種によっては上手くいく事もあります。
適期は6月~7月の梅雨時期です。
枝を2~3節の長さに切り取って、切り口をナイフ等で斜めに整えます。
下葉を取り除いて、上部の葉は1/2程度にカットします。
発根促進剤があれば使用し、水揚げをしてから挿し木用土に挿して下さい。
明るい日陰で水を切らさないように管理して発根を待ちます。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありません。