- 学名…Bletilla striata (Thunb.) Rchb.f.
- 和名…シラン(紫蘭)
- 科名…ラン科
- 属名…シラン属
- 原産国…日本、台湾、中国
- 花色…紫、白、黄
- 草丈…20㎝~60㎝
- 日照…日なた~半日蔭
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:5 to 9
シランとは
シランは、日本、韓国、中国、台湾、ミャンマーに自生するラン科シラン属の多年草です。
日本では本州の福島県以西、四国、九州、沖縄に分布しており、日当たりの草原や湿り気のある斜面などで自生が見られます。
ランとしては珍しく栽培が容易で、宿根草のように扱うことが出来るため、古くから親しまれている古典園芸植物の一つです。
身近な植物であるシランですが、野生種は個体数が激減しており、群馬県で絶滅、福島県など10府県で絶滅危惧Ⅰ類、環境省では準絶滅危惧種の指定を受けています。
シランはこぼれ種でも繁殖するため、純粋な野生種か栽培逸出かの判断が難しく、正確な分布状況は把握できないのが現状です。
シランの花期は4月~5月。
花期になると、長く伸びた花茎の上部に、ラン科の植物特有の美しい花を数個咲かせます。
▼シランの花
花は、外側の3個の外花被片(がいかひへん)と、内側3個の内花被片(ないかひへん)で構成されています。
▼シランの花の構造 その1
各花被片は配置により呼び名が付けられています。
外花被片は1個の背萼片(ドーサルセパル)と側萼片(ラテラルセパル)2個、内花被片は2個の側花弁(ペタル)と唇弁(リップ)1個に分かれます。
▼シランの花の構造 その2
唇弁の中央には縮れた5列のヒダがあり、唇弁の上には雄しべと雌しべが合着したずい柱(ずいちゅう)があります。
▼シランの唇弁とずい柱
花色は紅紫色~ピンク色。
白い花を咲かせる品種もあります。
果実は蒴果で、長さ3.4㎝以下の紡錘形です。
果実は熟すと裂け、中の種子が飛散します。
種子は1~1.5㎜の小さなもので、両側に翼が付いており、風に乗って遠くへと運ばれます。
▼シランの果実
葉は長さ8~29㎝、幅1.5~4㎝程度の披針形で、茎の下部に4~6枚程度が互生します。
葉には縦方向に皺が入り、陰影が美しく浮かび上がります。
花を咲かせながら草丈20~60㎝程度に成長します。
▼シランの葉の様子
耐寒性、耐暑性ともに高く、育てやすい植物です。
冬には地上部を枯らして休眠期に入り、春に再び芽吹きます。
シランの主な品種
シロバナシラン(白花紫蘭:Bletilla striata f. gebina)
白い花を咲かせる品種です。
フクリンシラン(覆輪紫蘭:Bletilla striata f. albomarginata)
葉の縁に白い覆輪が入る品種です。
花色は写真の紫の他、白い花を咲かせる品種もあります。
クチベニシラン(口紅紫蘭:Bletilla striata ‘Kutibeni’)
唇弁の先だけが紅紫色になる品種です。
キバナショウハッキュウ(黄花小白笈:Bletilla ochracea)
中国に分布するシランの近縁種です。
分布域は中国中西部にあり、標高300~2400mの林や茂みの中、草原などに自生しています。
草丈25~55㎝程度に成長し、淡い黄色から杏子色の花を咲かせます。
やや小型で繊細な草姿をしており、花期はシランよりも少し遅めです。
シランに比べると耐寒性、耐暑性に劣るため、栽培難易度は高くなります。
他にも青みを帯びた花弁の「青花シラン」、唇弁が3枚付く「三蝶咲きシラン」など、珍しい品種も流通するようになっています。
シランの育て方
栽培環境
日当たりの良い場所を好みますが、半日蔭でも育ちます。
完全な日陰になってしまうと、徒長して花付きが悪くなります。
やや湿った場所を好むので、乾燥しすぎない場所に植えて下さい。
夏場の直射日光で葉焼けすることがあります。
気になるようであれば、夏場は半日蔭になるような場所で育てます。
※キバナショウハッキュウは半日陰の環境を好みます。
夏越し、冬越し
夏越し
夏の暑さには強く、そのまま庭で夏越し可能です。
強い日差しで葉焼けすることがありますが、余程のことが無い限り枯れることはありません。
鉢植えの場合は、梅雨が明けたら半日蔭に移動してやると葉焼けを防ぐことが出来ます。
冬越し
土が凍ってしまうような寒冷地でなければ戸外での冬越しが可能です。
心配な場合は株元を腐葉土などでマルチングし、凍結対策を施します。
鉢植えの場合は、土が凍らないように軒下などに移動して下さい。
水やり
適度に湿り気のある環境を好みますが、多少の乾燥なら問題ありません。
庭植えの場合は、夏場に乾燥が続くようなら水やりをして下さい。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
冬場の休眠期には水やりの回数を減らして、やや乾燥気味に管理します。
肥料
元肥として、用土に緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
追肥は、春の3月~6月、秋の9月~10月に、緩効性化成肥料や油粕を置き肥します。
植え付け、植え替え
植え付け
適期は3~5月、9~10月です。
庭植えの場合は、用土に腐葉土を混ぜ込んで水はけの良い環境を作ります。
さらに元肥として緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
鉢植えの場合は、市販の山野草の培養土を使うか、赤玉土1:鹿沼土1:軽石1などの配合土を使います。
元肥として少量の緩効性化成肥料を混ぜ込んでおいて下さい。
成長が早いので、大きめの鉢に植え付けます。
シランの地下茎は扁平になった球状のバルブが横に連なっています。
植え付けの深さは、バルブの頭が隠れる程度です。
植え替え
適期は春の3月頃、秋の10月頃です。
鉢植えの場合は、1~2年に一度、植え替えを行います。
一回り大きな鉢に植えるか、株分けを行って下さい。
庭植えの場合は数年に一度、株が込み合って生育が悪くなってきたら株分けを兼ねて植え替えを行います。
増やし方(株分け)
株分けで増やすことが出来ます。
株分け
地下茎を株分けして下さい。
花芽は新しいバルブに付きます。
芽が付いているバルブを含めて3バルブを1株として株分けします。
芽が付いていない古いバルブも分球して植え付けておくと大体は芽を出して、2年目には花が付きます。
あまり細かく分けると開花までに時間がかかるので、同じように3バルブずつに分けて下さい。
病気・害虫
花や蕾にアブラムシが付きます。
見付け次第、駆除して下さい。