- 学名…Brassica oleracea L. var. acephala DC. f. tricolor Hort.
- 和名…ハボタン(葉牡丹)
- 科名…アブラナ科
- 属名…アブラナ属
- 原産国…ヨーロッパ
- 花色…黄色
- 草丈…20㎝~80㎝
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:
ハボタンとは
ハボタンは、アブラナ科アブラナ属の二年草、または多年草です。
ハボタンの原種は、ワイルド・キャベツと呼ばれるカンラン(Brassica oleracea)の変種・ケール(Brassica oleracea var. acephala)で、南ヨーロッパから西ヨーロッパの地中海沿岸地域を中心に分布しています。
カンランの食用食物としての詳しい歴史は不明ですが、少なくともギリシャ・ローマ時代には庭で育てられていたことが分かっています。
カンランは、自家不和合性などの純系が生まれにくい性質を持っており、個体によって葉姿や株姿など変異が大きいという特徴があります。
この性質が、後に多くの野菜の品種を生んだと考えられています。
ケールはカンランの変種の一つです。
カンランの変種には他にキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどがあります。
その中で結球しないケールが観賞用として栽培され、現在のハボタンの元となる品種が日本において作出されたと考えられます。
ケールは鎌倉時代中期から江戸時代初期の間に渡来していますが、ハボタンの作出は江戸時代中期以降で、以来品種改良が重ねられ、現在の「ハボタン」に至ります。
ハボタンは、花の少ない時期に美しい葉を観賞できることから、世界中で不変の人気を誇る園芸植物となっています。
ハボタンの観賞期は11月~3月。
葉は花弁のように同心円状に並び、結球することはありません。
美しい葉色は一定の寒さにさらされることで葉緑素が抜けたもので、赤色色素(アントシアニン)を持つものは紫やピンク、持たないものは白を発色します。
▼ハボタンの葉の様子
春になると伸びた茎の頂部に花序を出し、黄色い花を咲かせます。
花はアブラナ科に多く見られる4弁花です。
▼ハボタンの花
草姿が大きく乱れるので、多くは花が咲く前に処分されてしまいますが、多年草として育てれば、伸びた茎が分枝し、それぞれの先端にハボタンが付いた「踊りハボタン」になります。
※高性種は1年目から踊りハボタンに仕立てることも可能です。
ハボタンの原種
カンラン(Brassica oleracea)
スペインおよびフランスの地中海沿岸部、イギリスに分布する二年草、または多年草です。
和名はカンラン(甘藍)。
葉は最大で長さ45㎝、幅15㎝の長楕円形~卵形で、通常全縁、時に羽状に裂けます。
ロゼット状に葉を広げて冬を越し、春に黄色い花を咲かせます。
草丈40~150㎝に成長します。
本種からキャベツやブロッコリー、カリフラワーやケールなどの数々の野菜が作出されました。
ケール(Brassica oleracea var. acephala)
紀元前200年には古代ギリシャで食用、または薬用として栽培されていた古い歴史を持つ野菜です。
6世紀頃ケルト人によってヨーロッパに持ち込まれ、中世のヨーロッパでは最も一般的な緑黄色野菜となっていました。
日本には鎌倉時代中期から江戸時代初期の間に渡来したと推定されています。
葉を観賞する植物として独自の改良が加えられ、ハボタンが生まれます。
ハボタンの名前が最初に出てくるのは1717年(享保2年)です。
「諸禽万益集」の著者である源止竜が後書で園芸書「草花伝」を作成したと述べており、所収した215の植物名が列記されています。
その中にハボタンの名前が出てきます。
この頃からハボタンの栽培が盛んになったと考えられています。
ハボタンの主な品種
東京丸葉系(江戸葉牡丹)
江戸時代から東京で品種改良が行われてきた、最も歴史のあるハボタンの系統てす。
やや草丈が高く、キャベツのように葉が丸いのが特徴です。
江戸葉牡丹とも呼ばれています。
名古屋ちりめん系
縮葉ケールとの交配によって明治時代に名古屋で作出された系統です。
葉の縁がフリルのように細かく波打ち、華やかな印象のハボタンです。
大阪丸葉系
戦後に大阪で作出された系統です。
葉の縁が緩やかに波打ち、色彩が鮮やかです。
「東京丸葉系」と「名古屋ちりめん系」の中間型となります。
さんご系
1977年に発表された、切葉ケールと丸葉系を交配したものに、さらに丸葉系を掛け合わせた品種です。
深い切れ込みのある葉と、長い観賞期間が特徴です。
ハボタンの育て方
栽培環境
日当たりの良い場所が適しています。
寒さに当たることで美しい色が発色します。
室内や温室では葉が綺麗に色づかないので注意して下さい。
冬越し
耐寒性は高く、特に対策の必要はありません。
ちりめん系はやや耐寒性に劣るので、強い霜や凍結に注意して下さい。
水やり
庭植えの場合は、根付けばほぼ降雨のみで大丈夫です。
ひどく乾燥が続くようなら水やりをして下さい。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
肥料
窒素分の多い肥料を与えると発色が悪くなるので、肥料は三要素がバランス良く含まれたものを使用します。
また、色づき始める10月下旬以降に土に肥料分が多く残っていると、綺麗に発色しません。
10月以降は肥料を与えないようにして下さい。
庭植えの場合は、植え付け時に緩効性化成肥料を置き肥します。
追肥の必要はありません。
鉢植えの場合も同様です。
植え付け、植え替え
植え付け
適期は9月下旬~11月です。
庭植えの場合は、あらかじめ用土に苦土石灰、腐葉土、緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土(小粒)6・腐葉土3などの配合土に緩効性化成肥料を混ぜ込んで土を作ります。
植え替え
鉢植えで踊りハボタンに仕立てる場合は、花後に植え替えを行います。
根鉢を軽く崩して、新しい用土に植え付けて下さい。
踊りハボタンの仕立て方
花が終わったら、鞘が膨らみ始める前に花茎を切り取ります。
切り口が濡れると腐りやすいので、アルミホイルなどで覆って雨に濡れるのを防ぎます。
新しく芽が出て来たら、小さな芽は取り除いて下さい。
5月~9月頃まで緩効性化成肥料を定期的に置き肥して、生育を促します。
枝を整えて、好みの形に仕立てて下さい。
増やし方(種まき)
種まきで増やすことが出来ますが、多くの場合、自家採取した種では親株と同じ草姿には育ちません。
これは、流通している苗や種の多くが、一代交配種のためです。
種を採取する場合
花後に鞘が出来ます。
種が熟すと鞘が黄色く変色してきます。
放置しておくと鞘が弾けて種が落ちてしまうので、鞘が乾燥し始めたら花茎ごと採取して下さい。
紙袋などに入れて乾燥させると、袋に種がたまります。
採取した種は、紙袋などに入れて、さらに乾燥剤を入れた密閉容器に入れて冷蔵庫などで保管して下さい。
種まき
適期は7月~8月です。
暑い時期に種を蒔くので、種まき用土は新しいものを使って下さい。
種は播種箱などにまき、覆土は3㎜程度。
水やりをしたら、発芽までは明るい日陰で管理します。
発芽がそろったら速やかに日なたに移動して下さい。
本葉が2~3枚程度になったらポット上げし、根が回ったら定植します。
病気・害虫
アオムシが葉を食害することがあります。
見つけ次第捕殺して下さい。
防虫ネットやオルトラン粒剤などで、あらかじめ予防しておくのも効果的です。