別名…ヨウシュイブキジャコウソウ(洋種伊吹麝香草)、ワイルドタイム、クリーピングタイム、タイム・ロンギカウリス
科名…シソ科
属名…イブキジャコウソウ属
原産地…ユーラシア、北アフリカ
花色…薄紫、白、ピンク
草丈…5㎝~15㎝
日照…日なた~半日蔭
難易度…

USDA Hardiness Zone:4 to 8
クリーピングタイムとは
クリーピングタイムは、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアに分布するシソ科イブキジャコウソウ属の多年草です。
クリーピングタイムが属するイブキジャコウソウ属の仲間は、北半球に約350種が分布しており、日本にはイブキジャコウソウが、北海道、本州、九州に自生しています。
その中でクリーピンクタイムと呼ばれているのは、地面を這うように広がるほふく性の数種です。
主に流通しているのは、ヨーロッパを中心に分布するワイルドタイム(Thymus serpyllum)と、タイム・ロンギカウリス(T. longicaulis)の二種で、両種共に常緑性の多年草です。
クリーピングタイムの花期は4月~6月。
花期になると、分枝した茎の頂部から花序を出し、花径5㎜程度の小さな花を多数咲かせます。
花序は手毬状、または円錐状で、花はシソ科の植物に多く見られる唇形花です。
唇形花とは、筒状になった花の先が上下に分かれ、唇のように見える花のことです。
クリーピングタイムの唇形花は、上唇が浅く2裂、下唇が深く3裂しており、4個の雄しべと先が2裂した雌しべが花冠から突出します。
▼クリーピングタイムの花
基本種の花色はピンクから薄紫ですが、白花の品種も流通しています。
花は花蜜を多く分泌するため、ミツバチが通って来ることもあります。
ヨーロッパに広く分布するワイルドタイムの蜂蜜は、地中海地方の名産品として有名です。
▼ロンギカウリスの最盛期の花の様子
葉は楕円形で、茎に対生します。
葉には爽やかな芳香があり、触れると香りが広がります。
タイムの仲間ですが、通常はハーブとして料理には使用しません。
繁殖力旺盛で横にどんどん広がっていくため、グランドカバーとしてよく利用されています。
踏圧には強くないため、頻繁に踏まれるような場所には適していません。
基本的には常緑性の植物ですが、冬の気温によっては落葉したり地上部が枯れてしまう事もあります。
根が生きていれば、春にはまた芽吹きます。
真夏の暑さと湿気を嫌います。
風通しの良い場所に植え、適度な管理が必要です。
クリーピングタイムの主な品種
ワイルドタイム(Thymus serpyllum)
ヨーロッパから西アジアにかけて分布するタイムです。
川岸の砂地の場所、岩場、道路脇などで自生が見られます。
通常クリーピングタイムというと本種を指します。
ロンギカウリス種に比べるとやや葉が大きく、花付きに劣ります。
冬の寒さに当たると葉が銅色になります。
タイム・ロンギカウリス(Thymus longicaulis)
イタリアを中心に、ヨーロッパの地中海沿岸部に分布するタイムです。
牧草地や草原、岩場などで自生が見られます。
ワイルドタイムに比べると葉がやや小さく、長楕円形です。
花は密に付き、非常に花付きが良いのが特徴です。
最盛期には絨毯のように花で株が覆われます。
クリーピングタイムの近縁種
クリーピングタイムが属するイブキジャコウソウ属は、世界に約350種が分布しています。 「タイム」というのはイブキジャコウソウ属の植物の総称で、本種以外では以下のようなものが栽培されています。
クリーピングタイムの育て方
栽培環境
日当たりが良く、水はけの良い場所が適しています。
半日蔭でも育ちますが、日当たりが良い場所の方が葉の色艶や花付きが良くなります。
冬越し・夏越し
冬越し
耐寒温度は-10℃程度です。
寒さには強い性質で、北海道での植栽例も数多くあります。
特に対策の必要はありません。
強い霜や寒さに当たると、葉が変色したり落葉したりしますが、春になると元気に芽吹きます。
夏越し
高温多湿の環境が苦手です。
花が一段落したら梅雨に入る前に、切り戻しをして下さい。
バッサリと刈り込み、風通しを良くしてやります。
そのままでも枯れてしまうことはありませんが、蒸れから葉が枯れこんで来るので見苦しくなります。
水やり
乾燥気味な環境を好みます。
庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫です。
乾燥が長く続くようなら水やり行って下さい。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
冬には生育が鈍るので、水やりの回数を減らし、乾燥気味に管理します。
肥料
自生地は砂地や砂利などのやせ地です。
多くの肥料を必要とする植物ではありません。
庭植えの場合は、春に少量の緩効性化成肥料を置き肥します。
鉢植えの場合は、真夏を除く3月~11月の間、少量の緩効性化成肥料を置き肥するか、定期的に液体肥料を施します。
植え替え・植え付け
適期は4月~5月と9月~10月です。
植え付け
庭植えの場合は、あらかじめ用土に苦土石灰を混ぜて土壌を中和しておきます。
さらに腐葉土を混ぜ込んで、水はけの良い環境を作って下さい。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土やハーブの土を使います。
または、赤玉土(小粒)7・腐葉土3などの配合土に少量の緩効性化成肥料を混ぜ込んで土を作ります。
植え替え
鉢植えの場合は、根詰まりを起こしているようなら、植え替えを行います。
一回り大きな鉢に植え替えるか、株分けを行って下さい。
庭植えの場合は、特に植え替えは必要ではありません。
切り戻し
花が終わったら梅雨に入る前に切り戻しを行います。
混み合った箇所を刈り込むか、1/2程度の位置までバッサリと切り戻します。
蒸れると下葉が枯れこんできます。
適宜、切り戻しを行うことで美しい草姿を保つことが出来ます。
秋にも同様の刈り込みを行うことで、春には締まった草丈で新芽が出揃います。
増やし方(挿し木、株分け、種まき)
挿し木、株分け、種まきで増やすことが出来ます。
挿し木(挿し芽)
適期は5月~6月です。
若い枝を選び、10cm程度の長さで切り取って挿し穂にします。
下の方の葉を取り除き、水揚げをしたら、挿し木用土に挿して下さい。
株分け
適期は4月~5月、9月~10月です。
掘り上げた株を分けて植え付けます。
傷んだ根があれば取り除いて下さい。
地面に接した部分から発根するので、発根した茎を切り取って植え付けると簡単です。
種まき
播種時期は、4月~5月、9月です。
種が非常に細かいので、風で飛ばされないように注意して下さい。
種はポットや播種箱に、種が重ならないよう注意して蒔きます。
覆土は種が隠れる程度にごく薄く、水やりは底面給水で行います。
本葉が4~5枚程度になったら間引き、7~8枚程度で定植します。
秋まきで、苗が小さい場合は、霜柱で持ち上げられると枯れてしまうことがあるので、春に定植して下さい。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありません。