多年草・宿根草 ハーブ

タチジャコウソウ(コモンタイム)

  • 学名…Thymus vulgaris L.
  • 和名…タチジャコウソウ(立麝香草)
  • 別名…コモンタイム
  • 科名…シソ科
  • 属名…イブキジャコウソウ属
  • 原産国…フランス、イタリア、スペイン
  • 花色…淡いピンク色
  • 草丈…15㎝~30㎝
  • 日照…日なた
  • 難易度…星
  • USDA Hardiness Zone:5 to 9

タチジャコウソウ(コモンタイム)とは

タチジャコウソウ(コモンタイム)

タチジャコウソウ(コモンタイム)は、フランス、イタリア、スペインに分布するシソ科イブキジャコウソウ属の多年生の亜低木です。
自生地はフランス南部、イタリア北部、スペイン東部にあり、草原や野原の乾いた斜面、岩場などに自生しています。

ハーブとして広く料理に利用されており、ヨーロッパの他、世界各地で栽培されています。


タチジャコウソウ(コモンタイム)の花期は5月~6月。
花期になると、茎の頂部、または頂部付近の葉腋に花序を出し、淡桃色~白色の花を咲かせます。
花序は柄の無い集散花序が集まった輪散花序です。

▼タチジャコウソウ(コモンタイム)の花序

タチジャコウソウ(コモンタイム)の花序

花は径5㎜程度の小さな唇形花です。
唇形花(しんけいか)とは、シソ科の植物に多く見られる花の形です。
筒状に合着した花弁の先が上下2つに分かれており、この様子を口に見立て、上部を上唇(じょうしん)、下部を下唇(かしん)と呼びます。

タチジャコウソウ(コモンタイム)の唇形花は、上唇に浅く切り込みが入り、下唇が深く3裂しています。
下唇は中央の裂片が他よりやや大きくなっています。

▼タチジャコウソウ(コモンタイム)の唇形花

タチジャコウソウ(コモンタイム)の花

雄しべは4個、雌しべは1個、花柱の先が2裂しています。
雄しべは突出します。

▼タチジャコウソウ(コモンタイム)の雄しべと雌しべ

タチジャコウソウ(コモンタイム)の雄しべと雌しべ

葉は対生し、長さ3~8㎜、幅1~3㎜の線状楕円形~長楕円形です。
縁は裏面に巻き込むように反曲し、全体に細かい毛と腺があります。

▼タチジャコウソウ(コモンタイム)の葉の様子

タチジャコウソウ(コモンタイム)の葉の様子

多年生の亜低木で、枝は多数分枝し、高さ25㎝程度まで成長します。

▼成長したタチジャコウソウ(コモンタイム)

タチジャコウソウ(コモンタイム)

乾燥したやせ地を好みます。
寒さには強い性質ですが、高温多湿の環境が苦手で、夏場に枯れてしまうこともあります。

タチジャコウソウ(コモンタイム)の主な品種

数多くの品種が作出され、特徴のある香りを持つ品種もあります。
日本では夏越しが困難なため、あまり流通しません。

ナローリーフ・フレンチ(Thymus vulgaris ‘Narrow-leaf French’)

古くからある定番の品種です。
葉がコンパクトで細く、やや灰緑色を帯びるのが特徴です。

非常に香りが高く、様々な料理に利用されます。
花は白に近い淡桃色。

レモンタイム(Thymus × citriodorus)

レモンタイム

タチジャコウソウ(コモンタイム)とタイム・プレギオイデス(Thymus pulegioides)との交配種です。

プレギオイデスはヨーロッパの温帯地域原産のタイムで、コモンタイムに比べると幅広の葉を持ち、ピンク色の花が特徴です。
プレギオイデスもコモンタイム同様に料理に利用されることもありますが、交配種であるレモンタイムの方が普及しています。

様々な品種があり、葉の縁に白い覆輪が入る斑入り品種も流通しています。

▼斑入りのレモンタイム(シルバーレモンタイム)

斑入りレモンタイム

カンファータイム(Thymus camphoratus)

カムファータイム

ポルトガル南西部に分布するタチジャコウソウ(コモンタイム)の近縁種です。
分布域は主にポルトガル・アレンテージョ南西部の自然公園の中にあり、海岸近くの砂質土壌の場所に自生しています。

長楕円形~長菱形の葉が特徴のタイムです。
名前は葉にカンファー(樟脳)の臭いがあることから。

花はピンク色~淡紫色。
主に観賞用として栽培され、料理に利用されることはありません。

タチジャコウソウ(コモンタイム)の近縁種

タチジャコウソウ(コモンタイム)が属するイブキジャコウソウ属は、世界に約266種が分布しています。
「タイム」というのはイブキジャコウソウ属の植物の総称で、本種以外では以下のようなものが栽培されています。

タチジャコウソウ(コモンタイム)の育て方

タチジャコウソウ(コモンタイム)の育て方

栽培環境

日当たりが良く、水はけが良く、乾燥気味の環境を好みます。
じめじめした場所や、日当たりが悪い場所ではうまく育ちません。
蒸れないよう、風通しが良い場所で育てて下さい。

中性から弱アルカリ性の土壌を好みます。
酸性土壌では生育が悪くなり、枯れてしまうこともあるので注意して下さい。

夏越し

高温多湿の環境が苦手な性質で、夏場に蒸れから株が弱ったり、枯れてしまうことがあります。

花の時期に収穫を兼ねて切り戻しを行い、また夏前に枝が伸びているようなら再度、切り戻します。
鉢植えの場合は、梅雨の時期に雨の当たらない場所に移動します。

水やり

乾燥気味の環境を好みます。

庭植えの場合は、根付けばほぼ降雨のみで大丈夫です。

鉢植えの場合は、用土が乾いたのを確認してからたっぷりと水やりをします。

肥料

多くの肥料を必要とする植物ではありません。

庭植えの場合は、肥料を施す必要はありません。

鉢植えの場合は、春と秋に緩効性の化成肥料を置き肥します。

植え付け、植え替え

適期は春の3月~4月、秋の9月~10月です。

植え付け

酸性土壌を嫌います。

庭植えの場合は、植え場所の用土にあらかじめ苦土石灰を混ぜ込んで、土壌を中和しておきます。
根鉢の2~3倍の植穴を掘り、用土に腐葉土を混ぜ込んで、植え付けます。
株間は25~30㎝程度です。

鉢植えの場合は、市販の草花用培養土やハーブの用土が利用できます。

植え替え

庭植えの場合は、株が混みあってきたら株分けを行います。

鉢植えの場合は、根詰まりから枯れこむことがあるので、毎年植え替えを行って下さい。
一回り大きな鉢に新しい用土で植え付けます。

収穫、切り戻し

収穫

生育期であればいつでも収穫することが出来ますが、花の咲く時期が最も香りが高いと言われます。
枝の上部を花ごと切り取って利用します。
枝が木質化すると香りが強くなるので、古い枝から収穫します。

切り戻し

梅雨の時期に蒸れから枯れこむことがあるので、切り戻しを行います。
混みあった枝を切り、風通しがよくなるようにして下さい。

増やし方

挿し木、株分け、種まきで増やすことが出来ます。

※タチジャコウソウ(コモンタイム)は香りに個体差が出やすい植物です。
ハーブとして利用するなら、挿し木か株分けが確実です。

挿し木

適期は5月~6月です。

枝を2~3節切り取って挿し穂にします。
下部の葉を取り除き、水揚げをしっかりしてから、挿し木用土に挿します。

明るい日陰で水を切らさないように管理して発根を待ちます。

株分け

大きく育っているようなら、株分けをすることが出来ます。
適期は植え替え時の春と秋です。

掘り上げた株を分けて植え付けて下さい。

種まき

適期は4月~5月です。

種はポリポットなどに蒔き、覆土はしません。
種が小さいので水やりは霧吹きで行います。

1週間程度で発芽するので、発芽したら間引きます。
しばらく育苗し、ポットに根が回ったら定植します。

病気・害虫

病害虫の発生はほとんどありません。

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