- 学名…Lycoris Herb.
- 科名…ヒガンバナ科
- 属名…ヒガンバナ属
- 原産国…日本、韓国、中国、東南アジア、南アジア
- 花色…赤、白、黄、ピンク、オレンジ、紫、複色
- 草丈…20㎝~50㎝
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:6 to 9
リコリスとは

リコリスは、日本、韓国、中国南部を中心に、東南アジア、南アジアに分布するヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。
ヒガンバナ属には約20種の植物が分類されており、花の美しい幾つかの種が観賞用に栽培されています。
日本には、ヒガンバナ(Lycoris radiata)や、キツネノカミソリ(Lycoris sanguinea)、ナツズイセン(Lycoris squamigera)、ショウキズイセン(Lycoris aurea)などが自生しています。
日本ではヒガンバナのイメージが良くないせいもありは好んで栽培されることはありませんでしたが、欧米では花の美しさ、育てやすさから人気があり、原種の他、多くの園芸品種が流通しています。
リコリスの名前はヒガンバナ属の学名です。
園芸界では栽培されるヒガンバナ属の植物をリコリスと呼んでいます。
リコリスの花期は品種によってやや異なりますが、7月下旬~10月上旬。
花期になると、地面から花芽を真っ直ぐに伸ばして、茎の頂部に花序を出し、花を咲かせます。
花序は散形花序(さんけいかじょ)、4~10個の花が付きます。
※散形花序(さんけいかじょ)…1点から複数の花柄が放射状に伸びて、それぞれの先端に花がつく形。
参照…花序の形-散形花序
▼リコリス(ヒガンバナ)の花序

花は漏斗形で花序の外側に向いて咲きます。
花被片(かひへん)は狭倒披針形で反り返ります。
※花被片(かひへん)…萼片と花弁を合わせて花被片と呼び、その全体を花被と呼ぶ。
萼片と花弁が類似する、あるいはほとんど区別できない場合に用いられる。
内外2列になっている場合、外側にあるものを外花被(がいかひ)、内側を内花被(ないかひ)と呼ぶ。
▼リコリスの花

雄しべは6個、雌しべは1個。
▼リコリスの雄しべと雌しべ

花色は赤、白、黄、ピンク、オレンジ、紫、複色。
▼様々なリコリス



果実は蒴果(さくか)。
※蒴果(さくか)…乾燥して裂開し、種子を放出する果実のこと。
複数の心皮からなり、熟すと心皮と同数に裂ける。アサガオ、ホウセンカ、カタバミなどに見られる。
▼リコリス(ショウキズイセン)の果実

果実は熟すと裂け、種子を放出します。
※日本のヒガンバナはほとんどが三倍体であるため結実しません。
葉は細長い線形から帯状で、花の時期に葉はありません。
▼リコリスの葉の様子

夏に植えて秋に花を楽しむ夏植え球根で、耐寒性、耐暑性ともに高く、植えっぱなしでもよく花を咲かせます。
病害虫の心配もほとんどなく、育てやすい植物です。
関連図鑑
よく似た花を咲かせる植物に、同じヒガンバナ科のネリネがあります。
リコリスの毒性
ヒガンバナに代表されるリコリス属の植物は、有毒植物として広く知られています。
全草に毒性がありますが、鱗茎と呼ばれる球根には特に多くの毒性物質が含まれています。
含まれているのはリコリンなどのアルカロイド系の毒性物質で、摂取するとおう吐や下痢などの中毒症状を引き起こします。
一方で良質のデンプンも多く含有しており、戦時中は毒を抜く処理をして非常食として利用されていました。
また、田畑のあぜ道に群生している姿がよく見られるのは、土に穴をあけるネズミやモグラから作物を守るために、古い時代に持ち込まれて植栽されたとも考えられています。
リコリスの主な品種
ヒガンバナ(Lycoris radiata)

北海道から琉球列島まで広く分布している、最も馴染み深いリコリスです。
古い時代に中国から持ち込まれ、帰化したものと考えられています。
現在日本に自生しているヒガンバナはすべて遺伝的に同一で、中国から伝わった一株が分球によって広まったと推察されています。
三倍体のため不稔性。
ショウキズイセン(Lycoris aurea)

日本南部、中国に分布するリコリスです。
花期は10月中旬~下旬で、鮮やかな黄色の花が美しい品種です。
細い線形の葉は花後に出て、翌夏には枯れます。
日本では四国から沖縄にかけて分布しており、寒さにはあまり強くありません。
ヒガンバナは結実しませんが、ショウキズイセンには種が出来ます。
ショウキラン、リコリス・オーレアとも呼ばれます。
シロバナマンジュシャゲ(Lycoris albiflora)

ヒガンバナとショウキランの自然交雑種だと考えられています。
花期は9月上旬で、花後に葉が出ます。
花弁があまり反り返らず、葉はやや幅広です。
多くの変異が知られており、花色は白、クリーム色、薄桃など。
性質はヒガンバナによく似ています。
キツネノカミソリ(Lycoris sanguinea)

日本、朝鮮半島に分布するリコリスです。
花期は7月中旬~下旬。
葉は早春に出て、夏頃に枯れます。
日本では本州、四国、九州に分布しています。
変種にオオキツネノカミソリ(L. kiushian)があり、関東以西で分布が見られます。
雄しべ、雌しべが花冠から突出するのが特徴です。
▼オオキツネノカミソリ

ナツズイセン(Lycoris squanigera)

中国雲南省原産で、古い時代に渡来したと考えられています。
花期は8月~9月上旬。
葉は春に出て夏に枯れます。
花が大きく、淡いピンクの花被片はやや青味を帯びて美しい品種です。
リコリス・インカルナータ(Lycoris incarnata)

中国原産のリコリスです。
花期は8月で、葉は春に出て夏に枯れます。
薄桃色の花被片の中心に、ピンクの筋が入る花が美しい品種です。
関連図鑑
リコリスの育て方

栽培環境
日光を好みますが、半日蔭でも問題なく育ちます。
過湿な環境を嫌うので、水はけの良いことが大切です。
冬越し、夏越し
耐寒性は品種によりやや異なりますが、概ね寒さには強い性質です。
土まで凍る寒冷地の場合は、凍結対策を施して下さい。
水やり
庭植えの場合は降雨のみで大丈夫です。
鉢植えの場合は、花芽が出る頃から葉が枯れるまで、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
休眠期に入ったら乾燥気味に管理しますが、カラカラに乾かしてしまわないよう時々水やりをして下さい。
※キツネノカミソリ、ナツズイセン、リコリス・インカルナータなどは冬に葉がありませんが休眠期ではなく、土の中で生育しています。
春に出葉する品種も休眠期は夏です。
肥料
リン酸とカリ分の多い肥料が適しています。
庭植え、鉢植えともに、元肥として牛糞堆肥や緩効性化成肥料を用土に混ぜ込んでおきます。
植えっぱなしにしている場合は、追肥として2月頃に、緩効性化成肥料を株元にバラまいて下さい。
植え付け、植え替え
植え付け
適期は6月下旬~8月です。
球根を入手したらすぐに植え付けて下さい。
庭植えの場合は、用土に腐葉土を混ぜ込んで水はけの良い環境を作っておきます。
さらに元肥として、牛糞堆肥を混ぜ込みます。
覆土は球根1個分が目安です。
株間は10㎝~15㎝程度です。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土(小粒)7・腐葉土3などの配合土に緩効性化成肥料を混ぜ込んで土を作ります。
球根の頭が隠れる程度の深さに植え付けて下さい。
6号鉢に4~5球程度が目安です。
植え替え
数年間は植えっぱなしでもよく花を咲かせます。
庭植え、鉢植えともに、球根が増えすぎているようなら、分球を兼ねて植え替えを行って下さい。
花茎切り
花が終わったら花茎の上部で花房を切り落として下さい。
増やし方(分球)
自然分球でよく増えます。
分球
夏になって葉が黄変したら、球根を掘り上げて下さい。
たくさんの子球が出来ているので、切り離してすぐに植え付けます。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありません。