和名…サワギキョウ(沢桔梗)、ベニバナサワギキョウ(紅花沢桔梗)
科名…キキョウ科
属名…ミゾカクシ属(ロベリア属)
原産国…北アメリカ、メキシコ、東アジア、シベリア
花色…赤、ピンク、紫、青、白
草丈…30㎝~60㎝
日照…日なた
難易度…
USDA Hardiness Zone:3 to 9
サワギキョウ(宿根ロベリア)とは
ロベリアの仲間は、熱帯~温帯にかけて約400種が分布するキキョウ科ミゾカクシ属(ロベリア属)の植物です。
その形態は一年草から多年草、低木までと多岐に渡ります。
その中で宿根ロベリアとして流通するものの多くは、北米原産のロベリア・カージナリス種(Lobelia cardinalis)から作出された改良品種、または交配種です。
カージナリス種は、アメリカからカナダの太平洋側を中心に分布している多年草で、ベニバナサワギキョウの和名を持ちます。
また、東アジア原産で日本にも自生があるサワギキョウ(L. sessilifolia)も宿根ロベリアの仲間で、北海道から九州の高原の湿地に自生しています。
こちらは宿根ロベリアではなく「サワギキョウ」の名前で山野草として流通しています。
ここではカージナリス系の品種とサワギキョウを「宿根ロベリア」として紹介しています。
宿根ロベリアの主な花期は7月~9月。
※品種によりやや異なります。
花期になると、長く伸ばした茎の上部の葉の付け根から花柄を出して多数の花を咲かせ、穂状の花序を形成します。
花は蝶のようにも見える特徴的な唇形で、上唇は深く2裂して左右に伸び、下唇はやや浅く3裂しています。
上唇の間から突出しているのは、雄しべと雌しべが一つになったもので、最初に雄しべが成熟して花粉を出し、その後雌しべの柱頭が現れます。
この性質は同科のキキョウにも見られるもので、雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)と言います。
▼サワギキョウの花の構造
※上の写真は雌性期で、筒状になっている雄しべの中から雌しべの柱頭が伸びています。
花色は赤、ピンク、紫、青、白。
▼赤い花を咲かせる宿根ロベリア
葉は披針形で縁に細かい鋸歯があり、茎に互生します。
茎は分枝することなく真っ直ぐに伸び、花を咲かせながら草丈30~60㎝程度に成長し、株はロゼット状にまとまります。
耐寒性は高いのですが、やや暑さに弱い性質です。
暖地の場合は、夏場は涼しい場所で夏越しをさせた方が安全です。
北米原産種はロゼット状の葉を広げて冬を越し、サワギキョウは地上部を枯らして宿根し春に再び芽吹きます。
ロベリアには一年草として扱われるグループもあり、通常「ロベリア」というと一年草タイプのものを指します。
一年草タイプのロベリアは、小さな花を株いっぱいに咲かせた姿が愛らしい植物です。
サワギキョウ(宿根ロベリア)の主な品種
サワギキョウ(Lobelia sessilifolia)
北海道、本州、四国、九州の高原の湿地などに自生し、群生します。
サワギキョウの名前は、湿った場所に生え、花色がキキョウに似ていることに由来します。
ベニバナサワギキョウ(L. cardinalis)
アメリカからカナダ、メキシコの太平洋側、およびコロンビア北部に自生するロベリアです。
河川や沼地など湿り気のある場所を好んで自生し、目に鮮やかな赤い花を咲かせます。
この種を元に多くの園芸品種が作出され、「宿根ロベリア」の名前で流通しています。
ロベリア・シフィリチカ(L. siphilitica)
北アメリカ東部原産のロベリアで、草丈60㎝程度に成長します。
オオロベリアソウの和名を持ち、美しい青花を密に咲かせます。
基本種の花色は青ですが、園芸品種には白花を咲かせる品種もあります。
宿根ロベリア「ファン」シリーズ(Lobelia speciosa ‘Fan Series’)
北米原産のロベリアから作出された園芸品種で、草丈50㎝~80㎝程度に成長します。
赤花の「スカーレット」、ピンク花で銅葉の「サーモン」、青花の「ブルー」などの鮮やかな花色が揃います。
他にも南アフリカ原産で青い花を咲かせるバリダ(L. valida)などが流通しています。
サワギキョウの毒性
サワギキョウは毒草としても知られています。
茎を折ると白い乳液が分泌されますますが、この乳液にはロベリンというアルカロイドが含まれています。
ロベリンは、禁煙補助剤や薬物依存症の治療薬として使用されますが、大量に摂取すると中毒症状を引き起こします。
サワギキョウ同様、ロベリア属の植物全般に毒性があると考えられていますが、通常、栽培する分には特に問題はありません。
サワギキョウ(宿根ロベリア)の育て方
栽培環境
日当たりが良く、乾燥しすぎない場所が適しています。
半日蔭のような場所では徒長して花色も悪くなります。
よく日の当たる場所で育てて下さい。
自生地は湿地や湿り気の多い水辺ですが、乾きすぎるような場所でなければ育てることが出来ます。
鉢植えの場合は腰水栽培も可能ですが、常に新しい水に入れ替わるような環境を好むため、根腐れを起こしやすくなります。
水の汚れや水温の上昇に注意する必要があります。
冬越し、夏越し
冬越し
耐寒性は高く、特に対策の必要はありません。
夏越し
暑さには強い性質ではありません。
暖地で鉢植えにしている場合は、風通しが良い、午後から日陰になるような涼しい場所に移動して管理します。
水やり
自生地は湿地で極端な乾燥を嫌います。
庭植えの場合は、乾燥が続くようなら水やりをして下さい。
特に夏場の乾燥には注意します。
鉢植えの場合は、用土が乾いたらたっぷりと。
水切れに注意して管理して下さい。
肥料
あまり多くの肥料を必要とする植物ではありません。
庭植えの場合は、5月~6月頃に緩効性化成肥料を施して下さい。
鉢植えの場合は、さらに花後の秋にも緩効性化成肥料を施します。
植え付け、植え替え
植え付け
適期は3月~4月、10月~11月です。
庭植えの場合は、用土に腐葉土を混ぜ込んで水はけの良い環境を作って下さい。
根付くまでは乾燥に注意して育てます。
鉢植えの場合は、北米原産種や園芸品種には市販の草花用培養土が使えますが、サワギキョウの場合は山野草の培養土を使います。
植え替え
適期は春の3月か、秋の11月頃です。
鉢植えの場合は、根詰まりを起こしやすいので、1~2年に一度、植え替えを行います。
増えすぎているようなら株分けを行い、新しい用土で植え替えて下さい。
庭植えの場合は、株が混み合って生育が悪くなるようなら株分けを兼ねて植え替えを行います。
摘芯
5月~6月頃に一度摘芯すると、草丈を低く抑えることができ、枝数が増えてボリュームのある草姿になります。
花がら摘み
花が終わったら花がらを摘み取ります。
脇芽が伸びて再び開花します。
増やし方(株分け、挿し芽、種まき)
株分けと挿し芽、種まきで増やすことが出来ます。
株分け
適期は植え替え時の3月、または11月です。
掘り上げた地下茎を芽が付くように分けて植え付けて下さい。
挿し芽
適期は梅雨時期の6月~7月です。
先端から3~4節を付けて茎を切り、挿し穂にします。
下の節の葉を取り除いて、水揚げをしたら挿し木用土に挿して下さい。
明るい日陰で水を切らさないように管理して、発根を待ちます。
種まき
適期は4月~5月です。
種が非常に細かいので、ピートパンや播種箱に種が重ならないように注意してバラまきします。
宿根ロベリアの種は好光性なので、覆土はしません。
水は底面給水で、発芽までは水を切らさないように管理します。
発芽後、本葉が4~5枚程度になったらポット上げして下さい。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありません。