- 学名…Ilex crenata Thunb.
- 和名…イヌツゲ(犬柘植)
- 科名…モチノキ科
- 属名…モチノキ属
- 原産国…日本、台湾、朝鮮半島、中国
- 花色…白
- 樹高…3m~6m
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:6 to 8
イヌツゲとは
イヌツゲは、日本、台湾、朝鮮半島、中国に分布するモチノキ科モチノキ属の常緑低木です。
日本では本州から九州にかけて分布しており、山地の岩場や林縁など、日当たりの良い場所に自生しています。
萌芽力が強く刈り込みにも耐えるため、生垣として利用される他、トピアリーの素材としてもよく利用されています。
イヌツゲの花期は6月~7月。
花期になると、本年枝の上部の葉腋に、淡黄色の小さな花を咲かせます。
雌雄異株で、雄花は散形花序に2~6個が付き、雌花は単生します。
▼イヌツゲの雄花序
▼イヌツゲの雌花の様子
花は径5mm程度の4弁花で、目立つものではありません。
雄花は4個の雄しべがあり、雌しべは退化しています。
雌花には1個の雌しべと4個の雄しべがありますが、雄しべは退化して小さくなる傾向があります。
▼イヌツゲの雄花
▼イヌツゲの雌花
果実は径5㎜程度の球形の液果で、秋に黒く熟します。
▼イヌツゲの果実
葉は互生し、長さ1~3.5㎝、幅0.5~1.5㎝の楕円形から長楕円形です。
革質で表面に光沢があり、縁に浅い鋸歯があります。
葉柄は2~3㎜。
▼イヌツゲの葉の様子
枝は細かく分枝し、葉を密に茂らせながら樹高3~6m程度に成長します。
※まれに10mを超える樹高に成長することもあります。
耐寒性、耐暑性に優れ、育てやすい樹木です。
仕立て方によって、洋風の庭にも和風の庭にも使うことが出来ます。
イヌツゲとツゲ
イヌツゲとツゲはよく似た姿をしていますが、イヌツゲはモチノキ科、ツゲはツゲ科に分類されており、全く類縁関係のない植物です。
ツゲは、非常に成長が遅く硬く強度があるため、櫛や印鑑、将棋の駒、彫刻の材としてよく利用されます。
対し、イヌツゲは成長が速く材木として劣るため「イヌツゲ」の名がついたと言われています。
「イヌ」の冠は、本物に対して役に立たないという意味で付けられていますが、庭木としては非常に優秀な樹木です。
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イヌツゲの主な品種
マメツゲ (Ilex crenata ‘Convexa’)
イヌツゲの品種で、丸く膨らんだ葉が特徴です。
庭木としては本種が特に多く利用されています。
▼マメツゲの葉の様子
花や果実はイヌツゲと変わりなく、白い4弁花を付け、丸い果実を実らせます。
▼マメツゲの果実
マメツゲと呼ばれるためツゲの品種と思われがちですが、イヌツゲの品種で「マメイヌツゲ」とも呼ばれます。
イヌツゲ ‘ゴールデンジェム’ ( Ilex crenata ‘Golden Gem’)
鮮やかなレモンイエローの葉色が美しい品種です。
矮性で大きくなっても樹高1m程度ですが、成長は非常に遅いです。
年間を通じてカラーリーフとしての観賞価値があり、グランドカバーとしても利用することが出来ます。
日当たりが悪いと美しい葉色を発色しないので、よく日の当たる場所で育てます。
イヌツゲ ‘シロフクリン’ (Ilex crenata ‘Shiro-Fukurin’)
葉に白い覆輪が入る斑入り品種です。
斑入り品種には、黄色の斑や覆輪が入るものもあり、斑の入り方の違う様々な品種があります。
キンメツゲ (Ilex crenata ‘Kinmetsuge’)
新芽が美しい黄金葉になる品種です。
人気品種で生垣にもよく利用されます。
イヌツゲの育て方
栽培環境
日当たりが良い場所が適しています。
明るい半日蔭でも育ちますが、日照時間が足りないと枯れこんでしまいます。
冬越し、夏越し
耐寒性、耐暑性ともに優れており、特に対策の必要はありません。
北海道南部から九州地方で栽培可能な樹木です。
水やり
庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫ですが、植え付けて2年未満の株は土が乾いていたら水やりを行って下さい。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
極端な水切れを起こすと落葉してしまいます。
肥料
庭植えの場合は、寒肥として2月に有機肥料を株の周辺に溝を掘って漉き込みます。
鉢植えの場合は、3月に株元に緩効性化成化成肥料を置き肥して下さい。
植え付け
適期は4月~6月、9月~10月です。
庭植えの場合は、根鉢の2倍程度の植穴を掘り、元肥として緩効性化成肥料か有機肥料を植穴の底に入れておきます。
鉢植えの場合は、赤玉土(中粒)に半量程度の完熟腐葉土を混ぜ込んで用土を作ります。
剪定
剪定の時期は、3月~10月ならいつでも大丈夫です。
樹形を維持するように小まめに剪定を行うと、年間を通して美しい樹形が楽しめます。
萌芽力が強いので好みの樹形に仕立てることができます。
ひこばえが発生しやすいので、必要なければ枝の根元から切り取って下さい。
増やし方(挿し木・種まき)
挿し木と種まきで増やすことが出来ます。
種まきについては下記「種まき」の項目を参照ください。
挿し木
適期は6月~8月です。
挿し穂にはその年に伸びた新梢を使います。
枝を先端から10㎝程度の長さに切り、しっかりと水揚げをしてから挿し木用土に挿して下さい。
明るい日陰で水を切らさないように管理したら、1か月ほどで発根します。
種まき
種の採取
雌株は花後に果実が実ります。
10月頃になって黒く熟したら果実を採り、水で洗って果肉を取り除きます。
すぐに蒔かない場合は、濡れた砂などに埋めて乾燥させないようにして冷暗所に保管して下さい。
種まき
適期は10月~12月、3月です。
とりまきの場合は、種を乾燥させないように採取したらすぐに蒔いて下さい。
保管した種をまく場合は、砂から取り出した種を水で洗って播種します。
秋に播くと発芽は春になってからです。
種は鉢などに播いて覆土は5mm程度。
発芽した年の苗は直根性のため、鉢のまま1年ほど育てて下さい。
病気・害虫
ハマキムシ類
枝先を糸で束ねて葉を食害します。
放置すると被害が大きくなり見苦しい姿になってしまうので、見つけたら早めに対処して下さい。
捕殺するか薬剤で駆除します。
アカシマメイガ
幼虫が葉を食害します。
見つけたら捕殺するか薬剤で駆除して下さい。