- 学名…Antirrhinum majus L.
- 和名…キンギョソウ(金魚草)
- 別名…スナップドラゴン、ドラゴンフラワー
- 科名…オオバコ科
- 属名…キンギョソウ属
- 原産国…ヨーロッパ、地中海沿岸地域
- 花色…赤、オレンジ、黄、白、ピンク、複色
- 草丈…20㎝~120㎝
- 日照…日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:7 to 10
キンギョソウとは
キンギョソウは、ヨーロッパ、地中海沿岸地域原産のオオバコ科キンギョソウ属の多年草です。
分布域は主にポルトガル北部からモロッコ、フランス南部からシリアに至る地中海沿岸部に広がっており、海岸沿いの砂丘や砂土壌の場所を中心に自生しています。
美しい花を咲かせるため数百年前から観賞用として栽培、品種改良が行われており、現在ではヨーロッパの多くの地域で逸出したものが野生化しています。
日本へは江戸時代後半に渡来し、花壇植えや切り花として広く栽培され、数多くの園芸品種が流通しています。
本来は多年草ですが、多湿に弱く、日本では梅雨の時期に枯れてしまうことが多いため、一年草として扱うのが一般的です。
キンギョソウの花期は4月~6月。
花期になると、真っ直ぐに伸びた茎の頂部に花序を出し、多数の花を咲かせます。
花序は総状、花序には花が密に付きます。
▼キンギョソウの花序
花は長さ3~6㎝程度の唇形花(しんけいか)です。
※唇形花(しんけいか)…シソ科、ゴマノハグサ科の植物に多く見られる花の形。
筒状に合着した花弁の先が上下2つに分かれ、唇のような形になっている。上部を上唇(じょうしん)、下部を下唇(かしん)と呼ぶ。
▼キンギョソウの唇形花
キンギョソウの唇形花は、上唇は大きく、直立して2裂し、下唇は3裂して中央がぷっくりと膨らみます。
▼キンギョソウの花
キンギョソウの名前は、この花姿が金魚の泳ぐ姿に似ていることに由来します。
花序に密に付く花が、群れて泳ぐ金魚の姿に似ているからとも言われます。
また、唇形花は軽く押すと口を開くように動くのが特徴で、その様子が金魚が口をパクパクと動かすように似ているからとする説もあります。
花には甘い香りがあり、愛嬌のある花姿と共に春の花壇を彩ります。
※夏の涼しい地域では秋まで咲き続けます。
▼キンギョソウの花の様子
花色は赤、オレンジ、黄、白、ピンク、複色。
一重咲きの他、八重咲き、ペンステモン咲きがあります。
ペンステモン咲きは花弁が杯状に大きく開いて咲くので、少し違った印象を受けます。
▼様々なキンギョソウの花
果実は長さ1~1.5㎝の卵形の蒴果(さくか)です。
※蒴果(さくか)…乾燥して裂開し、種子を放出する果実のこと。
複数の心皮からなり、熟すと心皮と同数に裂ける。アサガオ、ホウセンカ、カタバミなどに見られる。
▼キンギョソウの果実
果実の中には多数の種子が入っており、熟すと上部が裂開し、種子がこぼれます。
▼熟したキンギョソウの果実
葉は茎の下部では対生、上部では互生し、長さ2~8㎝、幅1~3㎝の披針形~先の尖った楕円形です。
▼キンギョソウの葉の様子
基本種の葉色は緑ですが、シックな銅葉の品種もあります。
▼銅葉のキンギョソウ ‘ブロンズドラゴン’
茎は直立し、草丈20~120㎝に成長します。
▼たくさんの花を咲かせるキンギョソウ
夏越しをせず一年草として扱えば難しい花ではありません。
品種によってはこぼれ種でよく増えます。
キンギョソウによく似た小さな花を咲かせる植物にリナリアがあります。
リナリアはヒメキンギョソウの和名を持つ同科の植物で、キンギョソウに比べると繊細な草姿をしています。
キンギョソウの育て方
栽培環境
日当たりが良く、水はけの良い場所が適しています。
日照時間が足りないと、生育や花付きが悪くなります。
よく日の当たる場所で育てて下さい。
冬越し、夏越し
冬越し
暖地、温暖地であれば対策無しで戸外で冬越し可能です。
強い霜の心配がある場合は、鉢植えの場合は霜の当たらない場所で管理します。
庭植えで苗が小さい場合は、霜よけを設置すると安心です。
夏越し
多湿が苦手な性質で、多くは梅雨の時期に枯れてしまいます。
夏越しを考えている場合は、花がらをこまめに摘んで、種を付けさせないようにして下さい。
蒸れから枯れるのを防ぐため、梅雨前に草丈の1/3~1/2程度の高さで切り戻します。
下葉を残して切り戻して下さい。
梅雨の時期から夏の間は雨の当たらない場所で管理します。
風通しが良く、蒸れない環境が大切です。
夏越しした株は、秋にまた花を咲かせます。
水やり
庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫です。
鉢植えの場合は、用土の表面が白く乾いてから水やりを。
多湿な環境が続くと、根腐れを起こしやすいので注意して下さい。
肥料
庭植えの場合は、ほとんど必要ありません。
鉢植えの場合は、春と秋に2000倍に薄めた液体肥料を生育の様子を見ながら施します。
キンギョソウの根は繊細で、濃い肥料を与えると根が傷んでしまうので注意して下さい。
植え付け
庭植えの場合は、用土に腐葉土や堆肥を混ぜ込んで、水はけの良い環境を作ります。
株間は矮性種で15~20㎝程度、高性種で25~30㎝程度です。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土(小粒)6・腐葉土4などの配合土を使います。
日常の管理
高性種は風や雨で倒れやすいので、早めに支柱を立てて下さい。
花がらはこまめに摘んで下さい。
増やし方(挿し芽、種まき)
挿し芽と種まきで増やすことが出来ます。
種まきについては下記「種まき」の項目を参照下さい。
挿し芽
適期は5月~6月、10月です。
芽の先端から3節ほどの長さで切り取って挿し穂にします。
下の葉を取り除いて水揚げをしたら、挿し木用土に挿して下さい。
水を切らさないように明るい日陰で管理すれば、2~3週間で発根します。
種まき
一代交配種(F1)が多く流通しており、種を蒔いても親株と同じ花が咲かない場合があります。
種の採取
花後に種ができますが、キンギョソウの種は非常に小さく、果実が熟すと裂開し種がこぼれ落ちます。
果実が茶色く変色したら、花茎ごと切り取って袋などに入れて乾燥させて下さい。
完全に乾燥したら、果実の中から種を取り出します。
採取した種は封筒や容器に入れて、涼しい場所で保管して下さい。
ちなみにキンギョソウの鞘は、自然に破れるとドクロの形になって少々不気味です。
種まき
適期は春の4月~5月、秋の9月~10月です。
暖地、温暖地の場合は春まきだと夏までに十分な株に育たないことが多いので、秋まきにします。
種が非常に細かいので、種は播種箱などに重ならないように注意して蒔いて下さい。
発芽温度は20℃前後。
好光性種子なので、覆土は必要ありません。
水やりは底面給水で、発芽したら間引きます。
本葉が2~4枚程度でポット上げし、根が回ったら定植して下さい。
立枯病が発生することがあるので、播種、育苗の用土は清潔なものを使用して下さい。
病気・害虫
立枯病
苗が小さい時期に発生しやすい病気です。
播種、育苗の用土は清潔なものを使用して下さい。