多年草・宿根草

フリージア

  • 学名…Freesia hybrida
  • 和名…フリージア
  • 別名…アサギスイセン、コアヤメズイセン
  • 科名…アヤメ科
  • 属名…フリージア属
  • 原産国…南アフリカ
  • 花色…黄、白、赤、オレンジ、紫、ピンクなど
  • 草丈…20㎝~50㎝
  • 日照…日なた
  • 難易度…星
  • USDA Hardiness Zone:9 to 10

フリージアとは

フリージア

フリージアは、南アフリカ原産のアヤメ科フリージア属の多年草です。
フリージア属の植物は約16種が知られていますが、全てが南アフリカ地域の固有種です。

流通しているのはその中の幾つかの種を元に作出された園芸品種で、それらを総称して「フリージア」と呼んでいます。

フリージアが発見されたのは17世紀で、その後ヨーロッパや北アメリカに導入され、盛んに品種改良がおこなわれました。
その結果、現在では150種以上の品種が存在します。

日本には明治20年頃に渡来していますが、本格的に栽培が始まったのは昭和に入ってからです。
現在では種子島や沖永良部島を中心として、日本でも球根の生産が行われています。


フリージアの花期は3月中旬~5月上旬。
花期になると、伸びた茎の先に花序を出し、多数の花を咲かせます。
花序は穂状で基部で湾曲しており、先端では水平に近い角度になります。

▼フリージアの花序

フリージアの花序

花は直径2~5㎝程度の大きさで、花序の片側に付きます。
花被片は、外花被片(がいかひへん)3個と内花被片(ないかひへん)3個の計6個で、内花被片がわずかに大きくなっています。

※花被(かひ)…花において雄しべと雌しべの外側にある葉的な要素。
通常内外2列になっており、外側にある外花被(がいかひ)と、内側にある内花被(ないかひ)からなる。
外花被は「萼」、内花被は「花冠」と呼ばれますが、フリージアのように不明瞭なものは外花被・内花被と呼びます。

▼フリージアの外花被片と内花被片

フリージアの外花被片と内花被片

雄しべは3個、非対称的に片側だけに付きます。
雌しべは1個、花柱は糸状に3分枝し、柱頭は深く2裂、もしくはそれ以上に裂けます。

▼フリージアの雄しべと雌しべ

フリージアの雄しべと雌しべ

多くの品種で、花には芳香があります。
一般的に白花・黄花のフリージアはキンモクセイのような甘い香り、紫・赤色系統では果物のような甘酸っぱい香りを持ちます。

花色は黄色、白、赤、オレンジ、紫、ピンクなど。
一重咲きの他、八重咲き品種も流通しています。

▼様々な花色のフリージア

ピンク色のフリージア
白いフリージア
赤色のフリージア

果実は不規則な球形の蒴果です。
通常表面にはしわが入り、一室に数個の種子が入っています。
種子は熟すと褐色~暗褐色になります。


葉は先の尖った剣状、または長楕円形で、長さ15~30㎝、数枚が根生します。
草丈は、15㎝程度の小型種から50㎝を超える切り花用の高性種まで揃います。

▼小型種のフリージア

フリージア

温かい地方の植物なので、耐寒性はあまり高くありません。
霜の心配のない暖地なら、庭植えで育てることも可能です。
夏休眠性で、秋に芽を出して花を咲かせた後、夏に地上部を枯らせて休眠します。

フリージアの原種

フリージア・アルバ(Freesia alba)

フリージア・アルバ(原種)

南アフリカ・南部原産のフリージアの原種です。
主に砂丘や林縁の砂地や石の多い土壌に自生しています。

花は白~淡いクリーム色で、多くの場合、花被片の外側は淡い紫色を帯びます。
草丈12~40㎝に成長します。

後述のフリージア・レイクトリニイと共に、数多くの園芸品種の元となっています。

フリージア・レイクトリニイ(Freesia leichtlinii)

フリージア・レイクトリニイ(原種)

南アフリカ・西ケープ州原産のフリージアの原種です。
主に海岸付近に分布しており、砂質の土壌で成長します。

花はクリーム色で、花被片の一部に黄色い斑紋が入ります。
草丈6~25㎝に成長します。

アルバと共に多くの品種の元となっています。
アルバとの自然交雑も多数観察されています。

フリージア・コリムボーサ(Freesia corymbosa)

フリージア・コリムボーサ(原種)

南アフリカ・東ケープ州原産のフリージアの原種です。

花色は変化が多く、黄色が一般的ですが、稀に白花もあります。
一番下の花被片がローズ色やピンク色になることもあります。

ピンク色や濃い黄色の品種の元となっています。

※かつて、ピンクの花を咲かせるものはアームストロンギー(F. armstrongii)、濃い黄色のものはアウレア(F. aurea)とされていました。
前述の二種を合わせたこれらの原種から、現在の多彩な品種の大半が生み出されています。

フリージアの育て方

フリージアの育て方

栽培環境

日当たりが良く、風通しの良い環境が適しています。
フリージアは連作障害の出やすいアヤメ科の植物です。
庭植えの場合は、前年に同じアヤメ科の植物を植えていた土地は避けて下さい。

冬越し・夏越し

冬越し

耐寒温度は3℃程度で、寒さに強い植物ではありません。
南関東以南では庭植えでも大丈夫ですが、霜や凍結の恐れがある場合は腐葉土や敷き藁などでマルチングをして、しっかりと防寒対策を施して下さい。

心配な場合は鉢植えの方が安心です。
霜や凍結の恐れがない軒下などに移動するか、室内に取り込んで下さい。
室内で管理する場合は、日当たりの良い窓辺に置き、春に温かくなってから戸外に出すようにします。

夏越し

地上部の葉が完全に枯れたら、葉を取り除いて、水やりを止めます。
鉢植えの場合は、雨の当たらない場所に移動して、秋までそのまま保管して下さい。

水やり

庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫です。

鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
水が多いと徒長して軟弱に育ってしまいます。
特に発芽後の冬は、乾燥気味に管理して下さい。
夏の休眠期は、水やりの必要はありません。

肥料

庭植え、鉢植え共に、元肥として緩効性化成肥料を用土に混ぜ込んでおきます。
その後は、開花前の追肥として、液体肥料か速効性の化成肥料を施して下さい。

植え付け・植え替え

植え付け

適期は9月下旬~11月上旬です。

庭植えの場合は、葉茎が長く伸びていると霜で傷んでしまうので、出来るだけ遅く植え付けるのがポイントです。
用土に腐葉土を混ぜて水はけの良い環境を作り、元肥として緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
株間は5~10㎝、植え付けの深さ3㎝程度です。

鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土(小粒)6・腐葉土3・パーライト1などの配合土に、緩効性化成肥料を混ぜ込んで土を作ります。
5号鉢に5~8球が目安です。
球根の頭が隠れる程度に浅く植えておき、葉が数枚出た後に、株元がぐらつかないように1㎝程度の増し土をします。

植え替え

連作障害が出なければそのままで大丈夫ですが、フリージアは基本的に植えっ放しで育てるのには向かない植物です。
少なくとも2~3年に1度は球根を堀り上げて、植え替えを行ってください。
連作障害が出ると、病気になりやすく、生育も悪くなります。
庭植えの場合は、前年にアヤメ科の植物を育てていない場所、鉢植えの場合は新しい用土で植え替えて下さい。

球根の掘り上げ

6月頃になって葉が黄色く枯れて来たら、球根を掘り上げます。
丁寧に土を取り除いたら、古い球根の回りに付いている小さな新しい球根を取り外します。
ネットなどに入れて、風通しの良い日陰で保存して下さい。

増やし方(分球)

分球で増やすことが出来ます。
上記の方法で分球した新しい球根を、秋に植え付けて下さい。

日常の管理

花が咲き終わったらその都度、花がらを取り除きます。
花茎のすべての花が終わったら、花茎を付け根から切り取って下さい。
葉は球根の成長に必要なので枯れるまでそのままにしておきます。

花茎が長く伸びた場合は、花の重みで茎が垂れてしまう事があるので、支柱を立てておくと安心です。

病気・害虫

菌核病

茎や球根が褐色に変色し、腐敗して萎れてしまいます。
発病した場合は可哀想ですが、抜き取って処分するしかありません。
連作障害が出ると発病しやすくなります。
病気の発生を予防するためにも、2~3年に1度は植え替えを行って下さい。

モザイク病

葉や花に濃淡の縞模様が現れます。
発病すると葉の縮れや変形が起こり、ひどくなると枯れてしまうこともあります。
こちらも一度発病すると、処分するしかありません。
アブラムシが媒介する病気なので、発生した場合は早めに駆除します。

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