- 学名…Hydrangea arborescens ‘Annabelle
- 和名…アメリカノリノキ(亜米利加糊木)
- 別名…アメリカアジサイ
- 科名…アジサイ科
- 属名…アジサイ属
- 原産国…北アメリカ
- 花色…白、ピンク
- 草丈…0.9m~1.5m
- 日照…半日蔭~日なた
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:3 to 9
アジサイ【アナベル】とは
アナベルは、アジサイ科アジサイ属の落葉低木です。
北アメリカ東部に自生するアメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の変種を品種化したアジサイです。
園芸品種として作出されたものではなく、イリノイ州・アンナ市の近くで発見された、野生のアジサイです。
通常アメリカノリノキは装飾花を持たない、または小さな装飾花が数個付く程度ですが、発見された変種は大きな装飾花を手毬状に付けるものでした。
この変種をオランダで選別・改良し、品種化したのがアナベルです。
アナベルの花期は6月~7月。
花期になると、分枝した茎の頂部に花序を出し、多数の花を咲かせます。
花序は直径20~30㎝の半球形~球形です。
▼アナベルの花序
花のように見えるのはガクが大きく発達した「装飾花」と呼ばれる部分で、雄しべと雌しべが退化しています。
▼アナベルの装飾花
雄しべと雌しべを持つ両性花は、装飾花の内側でひっそりと咲いており、花弁を持ちません。
▼アナベルの両性花
純白の装飾花の他、アナベルの魅力の一つに花色変化があります。
蕾の頃は淡い緑、花が咲くと純白、咲き進んでいくと再び緑に変化し、秋にはドライフラワーのように乾燥します。
▼淡い緑色のアナベル
花色は基本種の白の他、ピンク。
白花のアナベルと同じように、淡い緑→ピンク→淡い緑→茶色と、花色が変化していきます。
▼ピンクアナベル
葉は対生し、長さ5~15㎝の卵形で、縁に鋸歯があります。
▼アナベルの葉の様子
多数分枝し、樹高0.9~1.5mに成長します。
▼たくさんの花を咲かせるアナベル
性質は強健で、耐寒性、耐暑性ともに優れており、北海道でも屋外での冬越しが可能です。
アナベルの名前の由来
アナベルの名前の由来には所説あります。
①古代ローマ時代の男性名アマビリス(Amabilis)を女性化したアナベル(Amabel)に由来するとする説。
アマビリスとは「愛すべき」という意味です。
②アナベルの原種が発見されたイリノイ州アンナ市に因んでいるとする説。
「Anna belle」とは「アンナの美人」という意味です。
③エドガー・アラン・ポーが最後に残した詩「アナベル・リー(Annabel Lee)」に由来するとする説。
この詩は、アメリカの地方伝説である船乗りと娘の悲恋の物語を元に創作されたのではないかと言われています。
伝説は亡くなってしまった娘を思い続ける船乗りの話で、ポーは若くして亡くなった妻への思いをこの詩の中で綴っています。
このように「アナベル」の名前の由来は幾つかありますが、いずれにしても美しく繊細な「アナベル」の花姿に相応しいものだと言えます。
アナベルの原種
アメリカノリノキ(Hydrangea arborescens L.)
アナベルの原種です。
分布域はアメリカ東部・ニューヨーク州~フロリダ州西部、アイオワ州、ミズーリ州、オクラホマ州、ルイジアナ州にあり、峡谷や川岸、断崖、岩が多い斜面などに自生しています。
装飾花は無いか、数個が花序の周りに付く程度です。
園芸品種ではアナベルの他、ピンクアナベル(‘Invincibelle’)、花序が球形になるグランディフローラ(‘Grandiflora’)などがあります。
アジサイの仲間
アジサイ属は、東アジアを中心に約73種が分布する低木です。 ※一部は東南アジア、新世界にも分布しています。
美しい花を咲かせることから品種改良も盛んに行われており、園芸品種の数は2000種を上回るとされています。
アジサイ【アナベル】の育て方
※樹高はそんなに高くなりませんが、横に枝が張るので露地栽培向きの植物です。
ここでは庭植えでの育て方を紹介しています。
栽培環境
日なたから半日蔭の水はけの良い場所が適しています。
極度に乾燥するような場所は苦手です。
真夏に強い西日が当たって乾燥が気になるようなら、株元をマルチングして水分の蒸発を防ぎます。
夏越し、冬越し
耐寒性、耐暑性共に優れており、特に対策の必要はありません。
水やり
ほぼ降雨のみで大丈夫です。
真夏に乾燥が長く続くようなら、朝か夕方に水やりをして下さい。
肥料
元肥として、堆肥や牛糞、緩効性化成肥料などを用土に混ぜ込んでおきます。
追肥は、1月~2月に寒肥、花後にお礼肥を施します。
どちらも緩効性化成肥料か、固形の油粕を施して下さい。
植え付け、植え替え
植え付け
適期は3月~4月、10月~11月です。
用土に腐葉土を混ぜ込み、さらに元肥として堆肥や緩効性化成肥料を混ぜ込みます。
肥沃な土壌を好むので、必ず元肥を用土に混ぜて下さい。
根鉢の2~3倍程度の植穴を掘り、根鉢を軽く崩して植え付けます。
植え付け後は水をたっぷりとやり、根と土を馴染ませて下さい。
植え替え
特に植え替えの必要はありません。
剪定
他のアジサイと違い、アナベルは新梢咲きの品種です。
花芽は開花する年の春に出来るので、花後すぐに剪定しなくても花芽を切り落とす心配がありません。
樹形を整えるための剪定は花後、または落葉期の2月~3月に行います。
細い枝や形の悪い枝は切り落とし、全体を丸く半円形になるように整えます。
必ず剪定が必要な訳ではありませんので、気になる場合に行って下さい。
株が大きくなって枝が込み合ってくると、下葉が落ちたりするので数年に一度、強剪定を行って枝を更新します。
強剪定の適期は11月~12月で、地際から2~3芽残してバッサリと刈り込んで下さい。
花数は減りますが、枝の勢いが増し大きな花を付けてくれます。
増やし方(挿し木)
アジサイは挿し木で簡単に増やすことが出来ますが、意外と失敗することが多いのがこのアナベルの挿し木です。
6月上旬~7月中旬に挿し木をする場合
新梢を使って挿し木をします。
硬くなったものを選び、2~3節の長さで切り取ります。
節の下1㎝で斜めに切り、下葉を取り除き、上の葉は半分にカット。
半日~1日ほど水に挿しておき、十分に水揚げをします。
挿し木用土に挿しますが、発根剤を切り口に付けて挿すと成功率が上がります。
用土は赤玉土(小粒)か挿し木用土で、下の節が土に埋まるように挿して下さい。
明るい日陰で水を切らさないように管理して、発根を待ちます。
発根したら徐々に日光にならしていき、1カ月ほどで鉢上げをします。
2月に挿し木をする場合
要領は同じです。
この時期は落葉しているので葉の処理は必要ありません。
下の節から発根、上の節から葉を出させます。
成功すれば春になると元気に葉を出してくれます。
そのまましばらく育て、4月頃に鉢上げをして下さい。
挿し穂に太い枝を使うと、その年に花が付くこともあります。
病気・害虫
うどんこ病
葉の表面が白い粉をまぶしたようになり、病気が進行すると葉が枯れてしまうこともあります。
初期であれば、病葉や落葉した病葉を取り除くことで拡大をある程度防ぐことが出来ます。
風通しを良くして、発生を予防して下さい。
カミキリムシ
株元におがくずのようなものが落ちていたら幹の中にカミキリムシの幼虫が潜んでいます。
放っておくと株が枯れてしまうので、早目に駆除して下さい。
幹に開いている穴から薬剤を注入するか、針金などを突っ込んで補殺します。
駆除の確認のため、新しいおがくずの発生に注意して下さい。