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クロユリ

学名…Fritillaria camschatcensis
和名…クロユリ
科名…ユリ科
属名…バイモ属
原産国…日本、ロシア、北アメリカ
花色…黒
草丈…10㎝~50㎝
日照…日なた(夏は日陰)
難易度…星
USDA Hardiness Zone:4 to 8

クロユリとは

クロユリ

クロユリは、日本、ロシア、北アメリカに分布するユリ科バイモ属の多年草です。
日本では本州・中部地方以北の地域から北海道にかけて分布しています。
クロユリというと一般的には北海道の低地に分布するエゾクロユリ(Fritillaria camschatcensis var. camschatcensis)を指しますが、広義の意味では中部地方以北の高山帯に分布するミヤマクロユリ(F. camschatcensis var. keisukei Makino)も含まれます。

エゾクロユリは染色体の数が一組多い3倍体で、花、草丈共に大きく、花数が多いのが特徴です。
3倍体の植物は通常不稔性で、葉や花が大きくなるという性質を持っています。
ヒガンバナやシャガなどが有名で、また、種子ができないという性質を利用して種無しスイカなどが作り出されています。
一方のミヤマクロユリは通常の2倍体で、エゾクロユリに比べると全体的に小さく、花数も少なくなります。
この特徴と比較的育てやすいという点から、流通しているクロユリの球根のほとんどはエゾクロユリです。

クロユリの花期は4月~5月。
※ミヤマクロユリは6月~8月に開花します。

花期になると、伸びた茎の先に花径3㎝前後の花を、1~数個下向きに咲かせます。
花は6個の花被片を持った鐘形で両性花と雄花があり、両性花には6個の雄しべと柱頭が3裂した雌しべがあり、雄花には雄しべのみがあります。

▼クロユリの両性花

クロユリ

▼クロユリの雄花

クロユリの雄花

花被片には網目模様があり、花姿は近縁種であるバイモに似ています。
花色は黒紫色~暗紫褐色で、黄色い花を咲かせる個体はキバナクロユリ(Fritillaria camschatcensis  form. flavescens)として区別されることがあります。

葉は長さ3~10㎝の披針形~長披針形で、3~5輪生します。
茎は直立し、エゾクロユリで草丈50㎝程度、ミヤマクロユリで草丈10~30㎝程度に成長します。

▼クロユリの草姿

クロユリ

寒さには強いのですが、夏の暑さが苦手な性質です。
冷涼な地域の植物のため、暖地での栽培は困難です。
適した環境であれば植えっぱなしでもよく育ちますが、その他の地域では夏越しの工夫が必要です。

クロユリの近縁種

クロユリが属するバイモ属は、世界の温帯地域を中心に約130種が分布しています。
観賞用として栽培されているバイモ属の代表的な植物にはクロユリの他、以下のようなものがあります。

クロユリの育て方

クロユリの育て方

栽培環境

春の芽出しから地上部が枯れるまでの間は日当たりが良い場所が適しています。
クロユリの球根は外皮が無いため、乾燥に弱く、また過湿な環境も苦手です。
北海道以外の地域では鉢植えで育てる方が安全ですが、庭植えにする場合には、落葉樹の下など、昼間に直射日光が当たらない場所が適しています。

夏越し

暖地・温暖地では夏越しの難しい植物です。
花後に地上部が枯れたら休眠期に入るので、鉢植えの場合は、涼しい日陰の場所に移動して下さい。

庭植えの場合は、球根を掘り上げて土を落とし、バーミキュライトやパーライトなどに埋め、秋の植え付け時期まで涼しい場所で乾燥に注意して保管します。

水やり

地上部がある生育期間中は、用土が乾いたらたっぷりと水やりをします。
地上部が枯れて休眠期になれば、乾燥気味に管理しますが、完全に乾かしてしまわないように注意して下さい。

秋になって再び気温が下がり始めたら、通常の水やりを再開します。

肥料

庭植え、鉢植え共に、植え付け時に元肥として、緩効性化成肥料を施します。
追肥は、芽出し前後に少量の化成肥料を施し、葉が緑の間に液体肥料を月に2~3回程度施して下さい。

植え付け、植え替え

適期は9月中旬~10月です。
クロユリの球根は鱗片が剥がれやすいので注意して扱います。
お土産などで入手した球根は、乾燥を避けるため、可能であればすぐに植え付けて下さい。

植え付け

庭植えの場合は、用土に腐葉土や軽石を混ぜ込んで水はけの良い環境を作っておきます。
さらに元肥として緩効性化成肥料を球根に触れないよう下方に混ぜ込んでおきます。
覆土は4~5㎝程度、株間は10㎝程度です。

鉢植えの場合は、山野草の培養土を使うか、草花用培養土に砂を混ぜて水はけの良い土を作ります。
土を自分で作る場合は、鹿沼土・赤玉土・日向土を混ぜたものにゼオライトを1割ほど混ぜ込みます。
用土に肥料分が含まれていない場合は、庭植え同様に、球根に触れないよう下方の土に緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきます。
覆土は4~5㎝程度、5号鉢に2球が目安です。

植え替え

鉢植えの場合は、1~2年に一度植え替えを行います。
分球しているようなら鉢を増やし、新しい用土で植え付けて下さい。

増やし方(分球)

自然分球、または鱗片挿しで増やすことができます。

鱗片挿し

剥がした鱗片を土に挿す方法です。
掘り上げた球根の土を落として、鱗片を丁寧に剥がします。
平鉢に挿し木用土を入れ、鱗片の下半分が土に埋まるように挿して下さい。
半日陰で、用土が乾いたら水やりをします。
うまく育てば2~3ヶ月程度で小さな球根ができてきます。

開花までには3~5年程度かかります。

病気・害虫

アブラムシが発生することがあります。
アブラムシはウイルス病を媒介することがあるので、見つけた場合は薬剤などで駆除して下さい。

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