- 学名…Adenophora takedae Makino
- 和名…イワシャジン(岩沙参)
- 科名…キキョウ科
- 属名…ツリガネニンジン属
- 原産国…日本
- 花色…紫、白
- 草丈…30㎝~70㎝
- 日照…半日蔭
- 難易度…
- USDA Hardiness Zone:7 to 9
イワシャジンとは
イワシャジンは、日本に分布するキキョウ科ツリガネニンジン属の多年草です。
分布域は関東地方南西部、中部地方南東部にあり、山岳地帯の渓流沿いの岩場などに自生しています。
イワシャジンの学名は「Adenophora takedae」ですが、種小名の「takedae」は登山家であり高山植物研究家である武田久吉氏に因んだものです。
イワシャジンの花期は9月~10月。
花期になると、茎の上部から花序を出し、多数の花を咲かせます。
花序は総状で、数個~10個程度の花が付きます。
▼イワシャジンの花序の様子
花柄は細く、長さ2~5㎝。
花は長さ1.5~2.5㎝程度の釣鐘形で、花冠の先が浅く5裂しています。
萼片は線状で長さ5~8㎜。
枝垂れて咲く繊細な花が美しい植物です。
▼イワシャジンの花
雄しべ5個は花冠の中にあり、雌しべは1個。
雌しべは花冠とほぼ同長です。
※イワシャジンは地域変異が多く、まれに雌しべが花冠から突出するものもあります。
▼イワシャジンの雄しべと雌しべ
基本種の花色は紫ですが、白花品種も流通しています。
一重咲きの他、二重咲き品種も見られます。
▼白花イワシャジン
果実は蒴果(さくか)。
※蒴果(さくか)…乾燥して裂開し、種子を放出する果実のこと。
複数の心皮からなり、熟すと心皮と同数に裂ける。アサガオ、ホウセンカ、カタバミなどに見られる。
根生葉は卵形、茎葉は互生し、長さ7~15㎝の披針形~広線形で縁に鈍い鋸歯があります。
細い茎を伸ばし、花を咲かせながら草丈30~70㎝程度に成長します。
▼岩場に自生するイワシャジン
高山植物で栽培難易度は高めですが、近年では平地での栽培に順応した株が流通しており、敷居は少し低くなっています。
冬は地上部を枯らして宿根し、春に再び芽吹きます。
暖地での栽培は夏越しが難しく、難易度が高くなります。
イワシャジンの名前の由来
イワシャジンは、漢字で書くと「岩沙参」です。
沙参というのは、漢方薬の生薬でイワシャジンが属するツリガネニンジン属や、その近縁種の根を乾燥させたものです。
岩場に生える沙参(しゃじん)という意味でイワシャジンの名前が付いています。
イワシャジンの地域変異
イワシャジンは地域変異の多い植物としても知られており、生育する地域によって草姿の違いが見られます。
ホウオウシャジン
南アルプスの鳳凰三山に分布します。
茎や葉が細く、草丈も低いのでより繊細な印象です。
ヤシャジンシャジン
山梨県・夜叉神峠付近に分布しています。
イワシャジンとホウオウシャジンの中間タイプ。
ウメガシマシャジン
静岡安部川上流、梅ケ島に分布しています。
花がやや短く丸みを帯びています。
その他にも数多くの変種があり、収集しているマニアの方も多数存在します。
イワシャジンと似た花を咲かせる植物
イワシャジンと似た花を咲かせる植物に、同属の近縁種であるソバナやツリガネニンジンがあります。
また、ハタザオギキョウもよく似た花を咲かせます。
ハタザオギキョウはヨーロッパ原産のホタルブクロ属の植物で、関東以北の地域で野生化しています。
イワシャジンの育て方
※庭植えでは管理が難しいため、ここでは鉢植えでの育て方を中心に紹介しています。
栽培環境
春に芽を出した後に栄養葉と呼ばれるスペード型の葉を広げます。
この時期はよく日の当たる場所で管理して下さい。
梅雨入り以降は、落葉樹の下などの半日蔭の場所に移動します。
真夏は直射日光を浴びると葉焼けを起こすので、半日蔭で管理できない場合は遮光します。
花が終わって再び栄養葉が出たら、日のよく当たる場所で管理して下さい。
庭植えの場合は移動が出来ないので、半日蔭の場所に植えます。
朝方に日が当たって、その後は日陰になるような場所が適しています。
ただ、日照時間が足りないと花付きに影響するので、鉢植えの方が管理しやすいです。
冬越し
耐寒性はあるので、戸外での冬越しが可能です。
雨を避けられ、凍結の心配のない場所で管理して下さい。
水やり
乾燥が苦手な性質で、極端に乾燥させると葉先が枯れ込んできます。
用土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをして下さい。
冬場はやや乾燥気味に管理しますが、完全に乾かしてしまわないように注意して下さい。
肥料
栄養葉が出始める頃から6月頃まで、液体肥料を月に2~3回程度、施します。
また、花後から11月上旬頃までも同様に液体肥料を施して下さい。
肥料が多いと花付きが良くなりますが、本来の儚げな風情ある姿ではなくなってしまいます。
控えめに施した方が、イワシャジン本来の草姿が楽しめます。
植え付け・植え替え
適期は、3月上旬の芽出し前から栄養葉が出始める4月上旬頃、秋になって葉茎が枯れる10月中旬~11月上旬です。
植え付け
用土は、市販の山野草用の培養土を使うか、配合して土を作ります。
配合例は、桐生砂4・焼赤玉土3・硬質鹿沼土3の配合土、または鹿沼土小粒単用、火山レキ単用などです。
鉢は通気性の良い腰高鉢が適しています。
元肥として鉢底に少量の緩効性化成肥料を入れておきます。
植え替え
2~3年に一度は植え替えを行います。
古い根を取り除いて、新しい用土で植え付けて下さい。
増やし方(株分け、種まき)
株分けと種まきで増やすことが出来ます。
種まきについては下記「種まき」の項目を参照ください。
株分け
植え替え時に行います。
無理やり引き裂いたりせず、手で無理なく分けられる範囲で株分けを行って下さい。
大株になって根が絡んで割れない場合は、ナイフを使って切り分けます。
その場合は、芽の位置を確認して芽が付くように切り分けて下さい。
種まき
種の採取
花後に子房が少し膨らみます。
膨らんだ子房が茶色く変色したら子房ごと採取して下さい。
採取した子房は日陰で乾燥させます。
完全に乾いたら子房から種を採取しますが、イワシャジンの種は非常に細かいので、紙などの上で子房を開けて下さい。
採取した種はそのままとりまきするか、春まで冷蔵庫で保管します。
種まき
適期はとりまきの場合は11月~12月、春の場合は2月~3月です。
種が非常に細かいので、ばらまきで覆土はしません。
水やりは底面給水で、水を切らさないように管理して下さい。
1~2か月で発芽し、開花までには2~3年かかります。
病気・害虫
害虫
ハダニ、ナメクジ、バッタ、アオムシなどが発生します。
見つけ次第、対処して下さい。
病気
かび病、軟腐病、うどんこ病などが発生します。
高温多湿な環境で、かび病、軟腐病が発生しやすくなるので注意して下さい。
また、ストレスによって株が弱るとうどんこ病も発生することがあります。
夏場は風通しが良く涼しい場所で管理するようにして、出来るだけ病気の発生を抑制して下さい。