和名…イチハツ(一初)
科名…アヤメ科
属名…アヤメ属
原産国…中国
花色…紫、白
草丈…30㎝~50㎝
日照…日なた~半日陰
難易度…
USDA Hardiness Zone:4 to 9
イチハツとは
イチハツは、中国に分布するアヤメ科アヤメ属の多年草です。
分布域は北西部の甘粛省から雲南省、チベット自治区、東部の江蘇省から海南省など、主に中部から南部にかけて広がっており、日当たりの良い斜面や土手、牧草地などに自生しています。
美しい花を咲かせることから世界で広く栽培されているアヤメ科の植物の一つで、日本には室町時代に渡来し、古くから栽培されています。
イチハツの花期は4月~5月。
開花時期はアヤメ類の中では比較的早く、最初に咲くという意味からイチハツ(一初)と呼ばれるようになったと言われています。
※古くから栽培されているアヤメ属の中では、シャガが最も早く開花します。
花期になると、株の中から花茎を伸ばし、1~2分枝した茎の頂部に、花径10㎝程度の花を咲かせます。
花は外花被片3枚と、内花被片3枚があり、外花被片は倒卵形で下垂し、内花被片は斜めに開きます。
外花被片にはトサカ状の突起物が付いており、これがイチハツの大きな特徴となっています。
▼イチハツの花の構造
内花被片の内側にある花弁のようなものは、雌しべの花柱が3裂して花弁状になったもので、花柱分枝(カチュウブンシ)と呼ばれます。
雄しべは分枝した雌しべの前面に沿うように、3本あります。
▼イチハツの雌しべと雄しべ
基本種の花色は青紫色ですが、白い花を咲かせる品種もあります。
葉は長さ15~50㎝、幅1.5~3.5㎝の幅のある剣形で、やや枝垂れます。
葉は淡い緑色をしており、葉脈が隆起したスジが目立ちます。
花を咲かせながら、草丈30~50㎝程度に成長します。
▼イチハツの葉の様子
耐寒性、耐暑性共に優れており、育てやすい植物です。
古来より藁葺き屋根の棟に植える風習があり、種小名は「tectorum(屋根に生じる)」、また、英名は「屋根のアイリス(ルーフアイリス:roof iris)」となっています。
放任でもよく繁殖し、よく花を咲かせます。
冬に地上部を枯らし、春に再び芽吹きます。
イチハツの主な品種
シロバナイチハツ(Iris tectorum f. alba、Iris tectorum var. alba)
白い花を咲かせる品種(もしくは変種)です。
中国で広く栽培されていることから多くの地域で帰化しており、本来の分布域などの詳細は不明です。
外花被片、内花被片共に白く、黄色いトサカ状突起物が特徴です。
斑入りイチハツ
葉にクリーム色~淡い黄色の斑が入る品種です。
葉は夏には緑葉になりますが、春には再び斑入りの葉が芽吹きます。
イチハツの近縁種
イチハツが属するアヤメ属は、北半球に約280種が分布しています。 美しい花を咲かせる種が数多くあり、観賞用として栽培されています。 観賞用として栽培されるものには本種の他、以下のようなものがあります。
イチハツの育て方
栽培環境
日当たりが良く、水はけの良い環境が適しています。
基本的に日当たりを好みますが、半日陰の環境でも問題なく育ちます。
強い乾燥は苦手な性質なので、庭植えの場合は、強い西日が当たらない環境で育てて下さい。
冬越し
耐寒性は高く、特に対策の必要はありません。
水やり
庭植えの場合は、夏場に乾燥が長く続くようなら水やりをして下さい。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。
肥料
庭植え、鉢植え共に、元肥の他、緩効性化成肥料を春と秋に株元に施して下さい。
植え付け、植え替え
植え付け
適期は花後の5月中旬~6月ですが、秋の9月頃にも植え付けることができます。
庭植えの場合は、掘り上げた土に腐葉土をたっぷりと混ぜ込んで水はけの良い環境を作ります。
植え付けた後はしっかりと水やりをし、根付くまでは乾燥に注意して育てます。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土7・腐葉土3などの一般的な配合土を使います。
植え替え
適期は花後の5月中旬~6月です。
鉢植えの場合は、根詰まりを起こすので、1~2年に一度、植替えを行います。
一回り大きな鉢に植え替えるか、株分けを行って下さい。
庭植えの場合も、株が混み合っているようなら株分けを行います。
増やし方(株分け)
株分けで増やすことができます。
株分け
適期は植え替え時の5月中旬~6月です。
イチハツは細い根茎を伸ばして繁殖していくので、掘り上げて切り分け、植え付けます。
病気・害虫
病害虫の発生はほとんどありません。