多年草・宿根草

ジャーマンアイリス

  • 学名…Iris germanica Hybrid
  • 和名…ドイツアヤメ(独逸菖蒲)
  • 科名…アヤメ科
  • 属名…アヤメ属
  • 原産国…ヨーロッパ
  • 花色…紫、白、赤、オレンジ、黄、青、複色
  • 草丈…20㎝~120㎝
  • 日照…日なた
  • 難易度…星
  • USDA Hardiness Zone:3 to 10

ジャーマンアイリスとは

ジャーマンアイリス

ジャーマンアイリスは、ヨーロッパ原産のアヤメ科アヤメ属の多年草です。
ジャーマンアイリスと呼ばれているのは、南ヨーロッパや地中海沿岸部にかけて分布するアヤメ属の植物を交雑して作出された園芸品種群です。
和名はドイツアヤメ、野生種はありません。

ジャーマンアイリスの品種改良は1800年代にドイツ、フランスで始まり、その後アメリカでも盛んに行なわれるようになりました。
アヤメ属の植物は交配しやすい性質を持っており、数多くの植物が現在のジャーマンアイリスに関わっていると考えられますが、交雑が進んだ結果、原種の特定が困難となっています。
現在推察されているのは、ヨーロッパに自生する自然交雑種であるアイリス・ゲルマニカ(Iris germanica)を元に幾つかの原種を交配して作出された系統がジャーマンアイリスだということです。


ジャーマンアイリスの花期は5月~6月。
花期になると、真っすぐに伸びた花茎の先に、花径10~20㎝程度の花を咲かせます。

▼ジャーマンアイリスの花

ジャーマンアイリスの花

花は、外側で下垂、あるいは水平に開いている外花被片(がいかひへん)3枚と、内側で立ち上がっている内花被片(ないかひへん)3枚で構成されています。

※花被(かひ)…花において雄しべと雌しべの外側にある葉的な要素。
通常内外2列になっており、外側にある外花被(がいかひ)と、内側にある内花被(ないかひ)からなる。
外花被は「萼」、内花被は「花冠」と呼ばれますが、ジャーマンアイリスのように不明瞭なものは外花被・内花被と呼びます。

▼ジャーマンアイリスの花の構造

ジャーマンアイリスの花の構造

ジャーマンアイリスの外花被片には特徴的なヒゲ状の突起物が付いており、「ヒゲアイリス」とも呼ばれます。
ヒゲ状突起は、多くの品種で黄色または白色です。

▼ジャーマンアイリスのヒゲ状突起

ジャーマンアイリスのヒゲ状突起

内花被片の内側にあるのは、雌しべの花柱が3裂してそれぞれが花弁状に変化したものです。
変化した花柱は、花柱分枝(かちゅうぶんし)、または旗弁(きべん)と呼ばれます。

※花柱分枝(かちゅうぶんし)…雌しべの柱頭が幾つかに分かれ、さらに花柱まで分枝している場合、この分枝部分を花柱分枝と呼ぶ。

雄しべは、雌しべの花柱それぞれに沿うように3個あります。

▼ジャーマンアイリスの雌しべと雄しべ

ジャーマンアイリスの雄しべと雌しべ

花は1本の花茎に5~10輪ほどが付き、次々と開花します。
花色は紫、赤、白、黄色、青、オレンジなど。
色鮮やかで豊富な花色からレインボーフラワーとも呼ばれます。

▼様々な花色のジャーマンアイリス

ジャーマンアイリス 黄色
ジャーマンアイリス(白と紫)
ジャーマンアイリス(淡紅色)
ジャーマンアイリス(紫)

果実は長さ3~5㎝、幅約2.5㎝の大きさの蒴果です。
丸みを帯びた3つの裂片から構成されています。


葉は長さ45㎝、幅3.5㎝以下の剣状で、白みを帯びます。
葉は平行状態で水平に重なります。

▼ジャーマンアイリスの葉

ジャーマンアイリスの葉の様子

根茎は多数分枝し、直径1.2~2㎝の大きさです。

▼ジャーマンアイリスの根茎

ジャーマンアイリスの根茎

花を咲かせながら草丈20~120㎝に成長します。

▼たくさんの花を咲かせるジャーマンアイリス

たくさんの花を咲かせるジャーマンアイリス

耐寒性が高く、北海道から九州まで広い地域での栽培が可能です。
土地さえ合えば、ほぼ放任で育てることができ、美しい花を次々と咲かせます。
地際の根茎が膨らんで球根のようになり、横に広がって良く増えます。

ジャーマンアイリスの近縁種

ジャーマンアイリスが属するアヤメ属は、北半球に約280種が分布しています。
美しい花を咲かせる種が数多くあり、観賞用として栽培されています。
観賞用として栽培されるものには本種の他、以下のようなものがあります。

ジャーマンアイリスの育て方

ジャーマンアイリスの育て方

栽培環境

日当たりが良く、水はけの良い場所が適しています。

ジャーマンアイリスは多湿な環境が非常に苦手です。
湿気が多いと「軟腐病」という株が腐ってしまう病気が発生しやすくなります。
庭植えの場合は、傾斜した場所や高台に植えたり、盛り土などで水はけが良くなる工夫をして下さい。

冬越し・夏越し

冬越し

耐寒性は高く、特に対策の必要はありません。
雪に埋もれても枯れることはありません。

夏越し

梅雨前に枯葉を取り除き、風通しを良くしておきます。
鉢植えの場合は、花後、雨が当たらない場所に移動して下さい。
庭植えの場合はそのままでも大丈夫ですが、水はけが悪い場所で育てている場合は、梅雨が始まるまでに根茎を掘り上げます。
涼しい日陰で保存しておき、植え戻して下さい。

 水やり

庭植えの場合は、ほぼ降雨のみで大丈夫です。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたらたっぷりと。

肥料

庭植えの場合は、3月と10月~11月に化成肥料を置き肥します。
月に1回程度で十分です。

鉢植えの場合は、2月~3月、10月~12月に、庭植え同様に肥料を施します。

チッソ分の多い肥料を与えると、葉がヒョロヒョロになり病気にかかりやすくなってしまうので、リン酸分の多い肥料を選んで下さい。

植え付け、植え替え

植え付け

適期は8月~10月です。

アルカリ土壌を好むので、庭植えの場合はあらかじめ、用土に苦土石灰や草木灰を混ぜ込んでおきます。
さらに腐葉土を混ぜて水はけの良い環境を作って下さい。
水はけの悪い場所では、盛り土をして高植えにします。
株間は30~40㎝程度、球根の下半分を埋める程度の深さで植え付けます。

鉢植えの場合は、赤玉土(中粒)5・鹿沼土(中粒)3・腐葉土2などの配合土に苦土石灰を混ぜて土を作ります。
7号鉢に1球が目安で、球根の下半分を埋める程度の深さで植え付けます。

深く植えると球根が腐ってしまうので、根茎の背中を出した状態で植え付けて下さい。

▼ジャーマンアイリスの球根の様子

ジャーマンアイリスの球根の様子

植え替え

適期は8月~10月です。

株が込み合って来ると花付きが悪くなったり病気が出やすくなります。
庭植えの場合は、2年~3年に一度、植え替えを行います。
連作障害が出ることがあるので、別の場所に植えるか、土を入れ替えて植え付けます。

鉢植えの場合は、根詰まりを起こしやすいので、毎年、新しい用土で植え替えて下さい。

どちらの場合も株分けを兼ねて行います。

日常の管理

しぼんだ花は取り除き、花が終わった花茎は切り取ります。
摘んだ後の切り口から腐ってしまうことが稀にあるため、この作業は、雨の前後は避けて行う方が無難です。

増やし方(株分け)

株分けで増やすことが出来ます。

株分け

適期は8月~9月です。

株を傷つけないように丁寧に掘り上げ、扇状に伸びた子株の根茎のくびれた部分で折り取ります。
株分けをしたら、根と葉を切り詰めます。
葉は半分程度の長さに、根は10㎝程度に。
切り口を乾燥させるため、数日間、天日に当ててから植え付けて下さい。

病気・害虫

軟腐病

ジャーマンアイリスが最もかかりやすい病気が軟腐病です。
この病気は、傷口から入った細菌が根茎を溶けるように腐らせてしまうやっかいな病気です。
水はけを良くすることで、ある程度の発生は予防できますが、かかってしまった場合は広がらないよう病株を取り除いて下さい。

高温多湿の時期に特に発生しやすいので、梅雨の時期の株分けや植え替えは厳禁です。

-多年草・宿根草