多年草・宿根草 観葉植物

シクラメン

学名…Cyclamen persicum
和名…シクラメン
別名…カガリビバナ、ブタノマンジュウ
科名…サクラソウ科
属名…シクラメン属
原産国…地中海沿岸、北アフリカ~中近東
花色…ピンク、白、赤、紫、黄、複色
草丈…10㎝~70㎝
日照…日なた
難易度…
USDA Hardiness Zone:9 to 10

シクラメンとは

シクラメン

シクラメンは、ヨーロッパ原産のサクラソウ科シクラメン属の多年草です。
シクラメン属の植物は、地中海沿岸部を中心に約24種が知られていますが、一般的に栽培されるのはシクラメン・ペルシカム種(Cyclamen persicum)を元に品種改良された園芸品種です。

ペリシカム種は17世紀にイギリスに導入されていますが、普及するようになったのは大輪種や様々な花色の品種、花弁が縮れるフリンジ種など、美しい花を咲かせる多数の品種が作出された19世紀後半になってからです。

日本には明治時代に渡来しましたが、当初は高温多湿の気候が合わず栽培方法を模索する日々が続いたようです。
現在では品種改良も盛んにおこなわれ、冬の鉢花の女王として広く普及しています。


シクラメンの花期は10月~3月。
花期になると花茎を長く伸ばし、花径3~5㎝程度の花を一輪咲かせます。
花茎は上部で曲がっており、花は下を向いています。

▼シクラメンの花茎

シクラメンの花茎の様子

通常花弁は5個で開花途中に反り返り、萼を包み込むような特徴的な形になります。

▼上から見たシクラメンの花の様子

上から見たシクラメン

▼反り返ったシクラメンの花弁

花の下側中央には、雌しべを取り囲むように5個の雄しべがあります。

▼シクラメンの雄しべと雌しべ

シクラメンの雄しべと雌しべ

花は秋から早春にかけて、次々と開花します。
花色は赤、ピンク、白、紫、黄色、複色。
一重咲きの他に八重咲き品種もあります。
花弁に細かいフリンジが入るものなど、バラエティに富んでいます。

▼フリンジ咲きのシクラメン

フリンジ咲きのシクラメン

葉は長い葉柄を持って根生し、ハート形~円形~楕円形で縁に細かい鋸歯があります。
葉には淡い緑色~白色の不規則な斑が入ります。
品種によってはシルバーリーフのものもあり、美しい葉にも観賞価値があります。

▼シクラメンの葉

シクラメンの葉の様子

耐寒性は低く、冬場は室内での管理が基本になります。

※耐寒性が比較的高い品種(ガーデンシクラメン)もありますが、ここでは一般的に「シクラメン」と呼ばれる寒さに弱い品種について紹介しています。
ガーデンシクラメンについては下記を参照下さい。

シクラメンの原種

シクラメン・ペルシカム(Cyclamen persicum)

シクラメン・ペルシカム(原種)

シクラメン・ペルシカム種は、鉢物として流通するシクラメンの原種です。
分布域は典型的な地中海性気候の場所にあり、北アフリカ・アルジェリアとチュニジア、エーゲ海東部の島々、および地中海北東部のトルコ本土、シリア、レバノン、ヨルダンに広がっています。
主に海抜1200mまでの開けた場所で、岩肌のポケットや隙間、低木やオリーブの木立の中など、石灰岩が風化してできる赤いテラロッサの土壌に生えています。

花色は白から深いカーマイン色で、通常花冠の口の周りが紫色~マゼンダ色になりますが、野生で全体が純白の花をさかせる種も知られています。
花には芳香があります。
葉は緑地に淡い緑や濃い緑色、灰色やシルバーなど、実に様々な模様があり、裏側は紫色をおびます。

シクラメン属の植物は、地中海沿岸地域を中心に24種が知られており、本種に様々なシクラメンを交配して数多くの品種が作出され世界中で栽培されています。

シクラメンの主な品種

非常に多くの品種が流通していますが、ここではごく一部の人気品種を紹介しています。

シクラメン・パピヨン(Cyclamen persicum ‘Papillon’)

シクラメン・パピヨン

千葉県・大栄花園の高橋氏によって作出された品種です。
特徴的な丸い花弁が蝶が飛んでいるように見えることから、パピヨンの名前が付いています。
現在では世界のスタンダード品種の一つになっており、ヨーロッパからF1(一代交配種)として逆輸入されています。

シクラメン・ピアス(Cyclamen persicum ‘Pierce’)

シクラメン・ピアス

茨城県のシクラメン育種家・細金裕氏によって作出された品種です。
咲き始めは白く、咲き進むと共に花弁に色が付いていきます。
日当たりが良い場所で育てると色が濃くなります。

【リップス】シリーズ

シクラメン リップス

複色系で不動の人気を誇るシリーズです。
福島県・金沢美浩氏作出で、花弁のグラデーションが非常に美しい品種です。
写真の品種は'スカーレット'です。
リップスシリーズには、花弁に繊細なフリンジの入る、より華やかな品種もあります。

シクラメン・ビクトリア(Cyclamen persicum ‘Victoria’)

シクラメン・ビクトリア

花弁に細かい切れ込みが入ったフリンジ種の代表品種です。
1906年にヨーロッパで作出されて以来、ビクトリアを元にした多数の品種が世界で育種されています。

黄花品種

シクラメン 黄花

シクラメンでは珍しい黄色の花を咲かせる品種です。
写真の品種は'ウエディングドレス・ゴールデンボーイ'です。
フリンジ系の花弁を持った黄花品種です。
他にも花弁の基部が赤く色づく'ゴールデンガール'などが流通しています。

シクラメンの育て方

シクラメンの育て方

※ここでは鉢植えでの育て方について紹介しています。

日常の手入れ

手をかけることで美しい姿を長く保つことができます。

花がら摘み・枯れ葉取り

咲き終わった花や黄色く枯れた葉は早目に取り除きます。
付け根近くをつまみ、ねじりながら引き抜きます。
放置しておくと病気の原因になるので、こまめに摘んで下さい。

葉組み

開花中は1か月に1回程度、葉の位置を組み替え、下になっている葉にも日光が当たるようにします。
中央付近にある葉を、株の外側の方にある葉と入れ替えて下さい。
葉が放射状になるように位置を調整します。

夏越しをした株も秋に同様の作業を行います。
葉を放射状に広げ、株の中心付近に日光が当たるようにスペースを空けて下さい。

冬越し・夏越し・季節の管理

シクラメンの生育適温は15~20℃ですが、5℃以上の気温があれば生育に問題はありません。

冬越し

最低気温が5℃~10℃を下回るようになったら、日の良く当たる窓辺などの室内で管理します。
開花株はやや気温が低めの場所に置くと、花が長持ちします。
窓際に置いている場合は、夜間の冷え込みに注意して下さい。
暖房器具の近くに置くと株が傷んでしまうので置かないようにします。
一日中暖房が効いているような部屋は、シクラメンにとって良い環境とは言えません。
暑さで萎れてしまうこともあるので、置き場所に注意して下さい。

春・秋

3月中旬~下旬以降は、日中は日当たりの良い戸外で雨に当たらないように管理します。
気温が10℃を下回るような時は室内に取り込んで下さい。
9月中旬以降も春同様に、日当たりの良い場所で雨に注意して管理します。
最低気温が5~10℃を下回るようになったら室内に取り込んで下さい。

▼夏越し
夏越しについては下記「夏越し」を参照下さい。

夏越し

夏越しの方法には休眠法と非休眠法があります。

休眠法

5月になって花が終わったら徐々に水やりを減らしていき、6月中旬には完全に水を断ちます。
葉が枯れたら風通しの良い日陰に移動し、雨が当たらない場所で管理して下さい。
9月になったら球根を掘り上げて土を全て落とし、根を半分くらいに切り詰めて新しい用土で植え替えて下さい。
植え替えを行ったら水やりを再開しますが、球根に水がかからないように注意します。
10月頃には新しい葉が出てきます。

※休眠した株は開花が遅れます。

非休眠法

雨の当たらない半日蔭の涼しい場所で管理して下さい。
風通しがよく気温が30℃を超えない場所が適しています。
水やりは通常通り行いますが、球根に水がかからないように注意して下さい。
9月中旬頃になったら植え替えを行います。
根鉢を崩さず、一回り大きな鉢に新しい用土で植え替えて下さい。

※シクラメンは暑さに弱く、途中で葉が枯れてしまうことがあります。
その場合は休眠法に切り替えて夏越しして下さい。

水やり

底面給水鉢の場合は、受け皿の水がなくならないように注意して下さい。
1か月に1回程度、受け皿を外して用土の表面から水をたっぷりと与えます。
普通鉢の場合は用土の表面が乾いたらたっぷりと。
葉をめくって球根の頂部に水がかからないようにして与えます。

※休眠中の場合は水は与えません。

肥料

9月~翌4月までの間は、1週間~10日に一度、液体肥料を施して下さい。
底面給水鉢の場合は、鉢皿に薄めた肥料を入れます。
夏場は、非休眠株の場合は2週間に1回程度、液体肥料を与えて下さい。
休眠株には肥料を与える必要はありません。

植え付け・植え替え

適期は9月です。

用土

用土には市販の草花用培養土かシクラメン専用の培養土を使います。
自分で土を作る場合は、赤玉土(小粒)5・腐葉土3・ピートモス2などの配合土に緩効性化成肥料を少量混ぜて土を作ります。
この土に籾殻燻炭を少量混ぜ込むと、排水性・通気性などが上がりなお良いです。

植え付け・植え替え

球根の頂部が土に埋まらないように植え付けて下さい。
植え替えは休眠株の場合、球根を掘り上げて土を落とし、根を半分程度に切り詰めて新しい用土で植え付けます。
非休眠株の場合は、根鉢を崩さずに一回り大きな鉢に新しい用土で植え付けて下さい。

増やし方(種まき)

シクラメンは自然分球しないので、種まきで増やす必要があります。
種まきで育てた株は、親株と同じ花や葉になるとは限りません。

まずは受粉

放っておいても結実することがありますが、受粉をした方が確実です。
シクラメンは受粉してから種が採取できるようになるまでに100~120日程度かかります。
種を採取したい場合は早目に受粉するようにして下さい。

花をつまんでトントンと弾くようにすると花粉が落ちます。
集めた花粉を他の花の雌しべに筆などで付けて下さい。
同一株でない方が受粉率は高まります。

受粉が成功すると花弁が落ちた後、花茎がクルンと曲がってきます。

種の採取

種が熟すと外側の皮が剥がれてきて種が顔を出します。
放っておくと弾けるので注意して下さい。
実を摘み取り、皮をむいて種を取り出します。
水洗いをしてから日陰で乾燥させて下さい。
直射日光に当たってしまうと発芽率が落ちるので注意が必要です。
乾燥した種は冷暗所で種まきの時期まで保管します。

種まき

適期は9月下旬~11月頃です。

種はまく前に一晩給水させておきます。
種まきはポットまきで、用土には市販の種まき用培養土を使います。
1つのポットに1粒の種をまきます。
覆土は5mm程度。
シクラメンの種は嫌光性なので、種をまいたら新聞紙などを被せておきます。
水やりは底面給水で行って下さい。
発芽温度は15℃前後で発芽までには30~40日程度かかります。
乾かさないように注意して下さい。

発芽したら徐々に光に慣らします。
本葉が3~4枚程度になったら鉢上げをして下さい。

病気・害虫

灰色かび病

葉や花に水がかかると発生しやすくなります。
水やりを上から行う場合は、葉や花に水がかからないよう注意して下さい。
枯れた花や葉を早目に取り除いて、清潔な状態を保つことも大切です。

軟腐病

球根が腐ってしまう夏場に発生しやすい病気です。
風通しの良い場所で管理するようにして、水やりの際には球根に水がかからないように注意します。

シクラメンホコリダニ、スリップス

葉や蕾が委縮したり奇形になったりします。

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